訪日中国人の買い物は中国系宅配便業者が配達する

 前回の当コラムでも触れたが、大阪観光の核である道頓堀の両サイドを埋めているのは中国系の店舗である。確かに土産物屋も免税店も一目見ればそうだとわかる。

 大阪で生まれ育った田中リュウさん(仮名)は筆者を道頓堀に案内しながら、「中国資本による道頓堀界隈の店舗進出は非常に顕著です」と話していた。

 道頓堀の近くには、中国系の国際宅配便業者が密集するエリアがあり、中国人訪日客が購入した土産物を祖国へ宅配している。日本の業者を極力介さずに、製造・輸出・販売・宅配まで、自分たちのネットワークで固める“自前化”は私たちが想像する以上に進んでいるようだ。

 ツーリズムのみならず、国外からのヒト・モノ・カネが入ってくる「インバウンド」は、イノベーションの創出や活力の取り込みから、地域経済や日本経済全体を活性化させるという期待が込められていた。

 その一方で、中国人訪日客をターゲットにした市場について言えば、20年の歳月とともに「中国資本による囲い込み」が進み、「日本企業はせいぜいそのおこぼれにあずかる程度」(大阪市内の物販事業者)とも言われるようになった。

 ポストコロナのインバウンド市場では、日本企業も中国依存度を低めてはいる。その一方で日本資本が背を向ける市場では、中国資本による寡占化がいっそう進む予感もある。「日中ビジネスのウィンウィンな関係」という言葉は過去に好んで使われたものだったが、実際はそうはなりにくいという現実が見えてくる。