歯周病の10のサイン、痛くなくてもほうっておけない2つの怖い理由毎日の歯磨きで歯垢を除去するのは、基本中の基本 (写真はイメージです) Photo:PIXTA

歯周病はプラーク(歯垢)の本体である細菌が出す毒素により、歯ぐきなどの歯周組織に炎症が起こる病気だ。糖尿病や肝臓病などと同じく「サイレントキラー」と呼ばれ、知らないうちに悪化し、歯が抜け落ちることも。さらに、ほうっておくと毒素は全身に散らばり、重篤な病気を誘発するといわれている。歯科医師に、原因から予防法、最新の治療法まで聞いた。(取材・文/フリーライター 水口陽子)

歯周病の原因は口内にいる
700種の細菌

  歯周病は、40代以上の8割が罹っている「国民病」でありながら、危機感が薄い人が多く、放置されがちです。歯周病と全身の病気の関係に詳しい森永歯科医院院長の森永宏喜先生は、こう解説します。

「歯が痛くなれば歯医者に行きますよね。ところが歯周病は自覚症状が乏しく、気づきにくい病気です。自覚症状が出てきたときには、病気はかなり進行していて、治療が難しくなっていることが多いのです。しかも怖しいことに、口腔の不健康は、生活習慣病をはじめとする全身の疾患の引き金になります」

 なぜ歯周病になってしまうのでしょうか。そのメカニズムを聞きました。

「歯周病の犯人は、歯垢です。普段の歯磨きで落としきれなかった汚れや食べかすは、歯の表面や歯間、歯と歯ぐきの間などに付着して、歯垢が作られます」

 歯垢は細菌の塊で、1グラムの歯垢にはなんと1億個もの細菌がいるそう。

「口腔内にはもともと常在菌といわれる約700種の菌がいて、なかでもレッドコンプレックスと呼ばれるPg菌、Td菌、Tf菌を中心とした複合感染で歯周病は発症します。これらの細菌によって歯ぐきに炎症が生じ、歯を支えている歯槽骨が溶けてしまうことで、最終的には歯が抜けてしまうのです」

 歯周病は口の中の多くの箇所が同時進行で悪化することも多く、気づいた時には複数本をごっそり失いかねません。

「歯が抜けてしまうだけはないのです。歯周病菌が放つ毒素が歯肉の血管に侵入し、血流にのって体内を巡り、体のあちこちで慢性炎症を起こし、さまざまな病気を引き起きすことになります」