『ユニクロ監査役が書いた 強い会社をつくる会計の教科書』の安本隆晴氏と、『強い会社の「儲けの公式」~AKB48、ユニクロから青山フラワーマーケットまで、あのビジネスはなぜ成功しているのか』の村井直志氏の公認会計士対談。会計士だけが知っている強い会社の秘密とは、やはり「決算書の数字を理解できる人がいる会社」ということです!

強い会社の経営者には
数字に長けた経営参謀がいる

村井 安本先生はいろいろな会社を見てこられたわけですが、「強い」と言われる会社に見られる共通点のようなものはあるのでしょうか。

安本 財務会計の面では、一般的な経営指標の良好な会社が強い会社と言えると思うので、それにつけ加えることは特にありません。でも、強いて言えば、本田宗一郎氏には藤沢武夫氏、松下幸之助氏には高橋荒太郎氏、スティーブ・ジョブズ氏にはマイク・マークラ氏のように、創業者のそばにしっかりした経営参謀がいるような会社ではないでしょうか。
 CEO(最高経営責任者)に対するCFO(財務担当責任者)がいて、けん制し合う関係が理想的ですね。
 また、統計を取ったわけではないので確かではありませんが、サラリーマン社長を除いて、上場企業のオーナー社長には営業畑や技術畑の出身者が多いように思います。つまり、オーナー社長には、経理・財務畑の出身者はほとんどいないのではないでしょうか。

数字に強い参謀なくして<br />「強い会社」にはなりえない!村井直志(むらい・ただし) 公認会計士。中央大学商学部会計学科卒業後、税務事務所、大手監査法人、コンサルティングファーム、上場企業役員などを経て、公認会計士村井直志事務所を開設。株式会社東朋FA取締役。日本公認会計士協会東京会にてコンピュータ委員長のほか、経営・税務・業務の各委員会委員、独立行政法人中小企業基盤整備機構にてIT推進アドバイザーなどを歴任。会計をビジネスコミュニケーションツールとして活用し、数字を駆使して、クライアントの経営改革支援を行う。各種講演、著作活動なども積極的に行っている。主な著書に、『決算書の50%は思い込みでできている』、『会計ドレッシング10episodes』、『会計直観力を鍛える』(ともに東洋経済新報社)などがある。

村井 京セラ創業者の稲盛氏も技術畑ですね。稲盛氏は現場をよく知っているので、売上を最大に、経費を最小にすれば会社は儲かるんだといった風に、誰にでも分かりやすく話をされます。一方で管理畑出身の社長はご自分が数字を分かっているので、かえって現場にフィードバックする数字の説明がうまくできないことも見受けられますね。
 第1回のお話に出たユニクロのセールのように商品単価を上手くコントロールしたり、新規顧客と既存顧客に因数分解して売り方を工夫したりすることで売上が上がるといった仕組みを分かりやすく説明できれば、社員も納得するのではないでしょうか。

安本 そう思いますね。稲盛氏の「アメーバ経営」は有名ですが、アメーバ経営とは組織を小集団=アメーバに分けて、そのリーダーが全責任を負うというものです。要するにリーダーそれぞれが経営者になる。
アメーバ経営の何がすごいのかというと、アメーバそれぞれの損益計算書があり、それらを全部積み上げていくと、会社全体の損益計算書になるという仕組みです。

村井 安本先生が著書で書かれているように、決算書は現在の会社の姿を映し出す鏡でもあります。アメーバ経営に限りませんが、強いといわれる会社では経営者をはじめとする経営責任を任されるリーダーたちが、企業の実態を完全に把握しながら運営していかなければならないわけです。当然、そこには会計知識がなくては務まらない。

安本 まさに、「全員参加経営」ですよね。社員1人ひとりが責任を持って目標を達成しますから、会社全体がものすごいパワーを持つわけです。