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岸博幸のクリエイティブ国富論

WBC敗戦から考える日本経済の本当の問題点

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第221回】 2013年3月22日
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 あるテレビ番組で野球解説者の赤星憲広さんとご一緒する機会があったので、番組の合間に「WBCで日本代表が負けた原因は何か?」という素人丸出しの恥ずかしい質問をしてみました。真面目に答えてくださった赤星さんの優しさに感動しましたが、そこで赤星さんが指摘してくださったいくつかのポイントの中の1つは、多くの日本企業の不振の原因と同じではないかと思わざるを得ませんでした。

日本代表の「最大の敗因」とは何か

 それは赤星さんは、概要以下のようなことを仰いました。

 「ドミニカやキューバなどの国もバントをしていたように、他の参加国も日本のような“スモール・ベースボール”をやるようになった。WBCが回を重ねる中で参加国がスモール・ベースボールを取り入れて進化しているのに、スモール・ベースボール本家の日本は以前と同じ野球だったのではないか」

 誤解を避けるために明記しておきますと、もちろん赤星さんは山本監督以下の指揮体制を非難したのではありません。日本の野球界全体の問題というニュアンスでした。

 いずれにしても、野球に詳しくない私の目から見ても、台湾戦の土壇場で盗塁を決めた鳥谷や同点打を打った井端のように、選手、即ち現場の戦力は十分な強さを持っていたように思えます。

 それでも日本が、そして野球大国の米国も決勝まで残れずに敗退したのは、過去2回のWBCのときと同じようにやれば勝てるという過信があったのではないでしょうか。それに対して、ドミニカやプエルトリコといった新興国は、日本のスモール・ベースボールなどを研究して戦い方を進化させたからこそ、決勝まで進出できたのではないでしょうか。

 もちろん、その他にも赤星さんはいくつかの点をWBCでの日本代表の敗戦の原因として指摘してくださいました。しかし、このように考えると、この点が日本代表の最大の敗因ではないかと思ってしまいます。そしてそれは、日本の多くの産業、そしてかつては名を馳せた有名企業が苦戦している原因とも重なる部分があるように思えます。

 その典型例はシャープではないでしょうか。シャープが経営危機に陥った最大の原因は将来予測を見誤った液晶パネルへの投資ですが、今も経営陣はその液晶パネルにこだわり続けているように見えます。

 シャープもWBC日本代表と同じように現場の力はしっかりしているはずなのに、技術面で新興国に追いつかれて実際に市場で負けている液晶パネル事業に拘り続ける経営判断が正しいかは、非常に疑問です。まだ“かつて世界を制覇した強み”にこだわり続ける姿は、新興国のキャッチアップという現実を考えずスモール・ベースボールを更に進化させられなかった日本野球と重なる部分もあるのではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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