「世帯年収1000万円」でも勝ち組ではなく中流?ミレニアル世代を襲う生活苦の実態年収1000万円でも安心して暮らせない世の中がやってくる……?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「こんなにお金がかかるとは……」
年収1000万円夫婦が募らせる不安

「世帯年収1000万円」というと節約生活とは無縁で、人生の「勝ち組」と思う人も多いだろう。2023年2月、与党の要職を務める政治家が、児童手当の所得制限をめぐって「高級マンションに住んで高級車を乗り回している人にまで支援するのか」と発言し、物議を醸したのは記憶に新しい。年収1200万円以上は支給の対象外となることから、SNS上では、「年収1200万円で高級マンションに住んで高級車を乗り回すことが可能なのか」という論議を呼んだ。

 厚生労働省がまとめた21年『国民生活基礎調査』によると、税金、社会保険料を含む所得1000〜1100万円の割合は全体の3.1%、平均所得は545.7万円なので、平均の2倍という数字に達している。確かに、額面年収が1000万円なら手取り年収で約700〜800万円弱になり、ひと月あたりの手取りは約60万円受け取れる計算だ。しかし、だからといって生活が安泰とは言い切れないのが現実だ。

「子どもが生まれてからこんなにお金がかかるとは思わなかった」と打ち明けるのは、23区で4歳の子どもを育てながらフルタイムで働く女性(32)。一歳上の夫(33)の年収を合わせると約1000万
円を超える。

「家賃は2DK・共益費込みで20万円前後かかります。私が住むエリアは、単身用であれば10万円程度で借りられても、ファミリータイプになると金額が一気に上がります。それから、光熱費、スマホ代などの固定費を含めると25万円、車を所有しているので月4〜5万円程度の出費がかさんでしまい、食費はどんなに自炊を心がけても月10万円ぐらいには達してしまいます」(前出の女性)

 賃貸で生活するよりも、住宅ローンの金利が低いうちにマイホームを購入したほうがいいと思うが、「住宅価格が近年かつてない勢いで高騰しているので、マイホームを断念する人が増えている」というのは、『世帯年収1000万円:「勝ち組」家庭の残酷な真実』(新潮新書)の著者でファイナンシャルプランナーの加藤梨里氏。

「世帯年収1000万円」でも勝ち組ではなく中流?ミレニアル世代を襲う生活苦の実態出典/国土交通省・不動産価格指数(住宅)(令和5年8月分・季節調整値)
拡大画像表示

「不動産価格の全国平均はこの10年でおよそ4割も上昇しています。東京を中心とした首都圏では、不動産調査会社『東京カンテイ』のまとめでは、ファミリー向けである70平方メートルの中古マンションの売り出し価格は23年2月に4866万円に達し、5年前の1.5倍近くになりました。さらに東京23区の価格は11月に7136万円にもなっています。結婚して子どもができた頃にマイホームを購入しようと思っていた30代の人たちは、マイホームが購入できないのでそのまま高い家賃を支払い続けるといった暮らしを、余儀なくされているのです」(加藤氏)

 タワーマンションに住むどころか、狭小住宅に住まざるを得ないという。それならば都心に住むことにこだわらず、郊外に転居して家賃を抑えて、貯蓄を増やした方がいいのではないかと思う人も多いだろう。ところが、子育てをしながら働く女性を取り巻く課題があった。