■HOBOTAMA(ほぼたま)/キユーピー

「キユーピー マヨネーズ」で知られるキユーピーは、自社が手掛ける「グリーンキユーピー」というプラントベースフードブランドの商品として、2021年6月に「HOBOTAMA」を業務用に発売。現在は、市販用に解凍してそのまま食べられる「スクランブルエッグ風」と、加熱してオムレツや菓子作りに使える「加熱用液卵風」の2種類を通信販売で展開している。

「HOBOTAMAは、日本人の味覚になじむ豆乳やアーモンドパウダーをベースに作られたプラントベースエッグです。スクランブルエッグ風のものは“半熟卵のトロトロ感”を再現し、解凍してそのままパンに挟んだり、温めてスクランブルエッグにしたりと、手軽に食べられます。一方、加熱用の液卵風は、火にかけるとふわっと固まる状態になるのが特徴です。加熱調理時にだしを入れて“だし巻き卵風”にしたり、茶わん蒸しにしたり、さまざまな料理にアレンジできます」(キユーピー新規市場開発部・平位美和氏)

食感と味の再現のために
重ねた試行錯誤

 HOBOTAMAの開発時に重視したのは、卵特有の「味」と「食感」。開発担当者が自ら納得する仕上がりになるまで、試行錯誤の末に誕生したという。また、市販用の販売を開始するときには「加熱用液卵風」が追加された。

「本物の卵には、加熱すると固まる特性があり、多くの人がそれを当たり前に感じています。しかし、開発担当者によると“加熱して固まる性質”の再現が最も難しく、原材料の選定から苦労し、ようやくHOBOTAMA液卵風の製品化が実現したそうです」

 苦労のかいもあり、同商品の売れ行きは好調。プラントベースフードメニューを提供する飲食店でも採用されるケースが増えているそう。

HOBOTAMA(ほぼたま)/キユーピーHOBOTAMAの開発担当者は、さまざまな飲食店でオムライスを食べ歩く愛好家。大好きな卵の食感を再現するため、一切妥協しなかったという。シンプルな味付けなので、さまざまな料理に活用できる 画像提供:キユーピー

「発売当初は、業務用のみ販売していました。しかしその後、卵アレルギーを持つ方や、家庭に卵アレルギーのお子さんがいる保護者の方から『家庭用にもHOBOTAMAを販売してほしい』という声が多く寄せられたんです。そうした声を受けて、2022年3月から市販用の『HOBOTAMA』の製造・販売もスタートしました」

 実際にHOBOTAMAを購入した人々からは「家族で同じ料理を食べられるようになった」「献立の悩みが軽くなり、助かっている」などの声が届いているという。

 そのほか、宗教上の理由や菜食主義など、多種多様な食生活を送る人々にもHOBOTAMAが受け入れられている、と平位氏。

「HOBOTAMAは、みなさんの食の選択肢を増やす食品として生まれました。昨今の卵の高騰で『卵の代わりになるか』という内容のお問い合わせもいただきますが、本物の卵よりも割高で、コンセプトが異なるので、卵に取って代わる食品ではありません。卵の代替食ではなく『HOBOTAMA』という新しい食べ物として手に取っていただくと、新鮮な驚きやおいしさの発見につながるはずです」

 今後も、同社はプラントベースフードのアイテムを拡充していく予定とのこと。長年、卵と向き合ってきたキユーピーが生み出した「HOBOTAMA」は、卵の代わりではなく“次世代の食品”なのだ。