でも、現実的には、業界の定める期限(○歳以降は転職が厳しくなるなど)や、体力の衰え、同世代が挑戦を控えて安定志向にシフトしていく状況など、年齢を重ねるほど新たな挑戦を断念する後ろ向きな理由が増えていきます。

 若いうちはまず何者かにならなければいけないため、受験も就職活動も頑張りますが、再度状況を変えようとすると「これまでに築いてきたスキルでそれなりに生きていけちゃうもんな」と迷うことでしょう。

 私の話を少ししてみます。アイドルには、業界の定める上限年齢が明確にあるわけではないですが、会社員の定年よりはるかに短いことははじめから頭にありました。セカンドキャリアとして芸能の道を選択するのであれば、一般的に「同業他社への転職」的な意味合いになります。

 私は歌やダンス、お芝居、バラエティー番組への出演など、当時いた業界での仕事を継続したい気持ちはありませんでした。そうなると残るは「異業種への転職」「退職」です。ちょうどカウンセリングに興味を持ったため、異業種への転職をして今に至ります。

 同業他社への転職と違って、未経験採用みたいなものなので、前職でのスキルは通用しない面も多くありましたが、結果的には今のキャリアに満足しています。前職に期限があることが頭にあったからできた選択だと思います。アイドルで定年までご飯が食べられる世界だったら、あえてカウンセラーに転職するか否かは迷ったのかな。どうだろう。

 社会人になってから大学進学をし、卒業したことを評価していただくのはとてもありがたいです。一方で、きっとあのタイミングで進学していなかったら後々自分が後悔しそうだったので、キャリアのためというより「自分のため」の選択でした。