清和会事務総長の実態は
流布されたイメージと大きく異なる

 この事件では、松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相、高木毅前国対委員長といった清和会事務総長経験者が立件されるのでないかと話題になったが、事務総長の力はたいしたものではない。

 清和会事務総長が、党運営の実務にかかわらない首相に代わって、実質的には党運営をまかされる自民党幹事長のようなものだというイメージが流布されたが、そんなことはありえない。実際の権限は、派閥の会合を招集したり、他派閥との事務的な打ち合わせの窓口だったりするだけだ。

 1日の衆院政治倫理審査会の質疑から、安倍元首相によるキックバック中止の指示が実行されなかったことについては、西村前経産相が事務総長を辞めて高木前国対委員長が就任するまでに開かれた最高幹部の会合で決まった方針に基づくものという構図が浮かび上がってきた。

 そもそも、もし、事務総長が党の幹事長のようなポストだったら、みんななりたがるし、派閥の後継者への登竜門になるはずだが、まったくそういうことではない。

 それがどうしてありもしない権限を持っているようにでっち上げられたのかといえば、名前が立派なのでマスコミが釣られたという面もあろうが、検察が岸田内閣の官房長官と経済産業大臣が逮捕されるかもしれないといううわさを流すことで、これらの政治家を更迭させ、岸田内閣を萎縮させ、また、「不起訴ではあるが巨悪を懲らしめた」という点数稼ぎを世論に対してする狙いがあったのでないかと思う。

 裏金システムはある時期の清話会会長の主導でつくられたのであろう。2006年に会長となった町村信孝元衆議院議長のあと、細田博之前衆議院議長と安倍晋三元首相が会長をつとめていたが、この三人はいずれも故人である。

 まして、安倍元首相については、もともと派閥の幹部だったこともなく、2012年に復活した自民党総裁選挙では、清和会は会長だった町村信孝氏を推していたほどである。安倍元首相は、2021年に派閥会長になって初めて閥務にかかわった。

 そして、安倍元首相はこのような裏金システムを知ってただちに止めるように指示したともされているのだから、批判されるべき対象ではあるまい。

 清和会の会長は、町村信孝氏の前は、森喜朗元首相と小泉純一郎元首相である。当然、この二人に話を聞くべきなのである。マスメディアはなぜ、清和会一強体制を築いた小泉元首相の責任を追及しないのか不思議だ。ただ、小泉元首相は自分の政治資金のことすら家族に任せきりなくらいだから、清和会の資金にも精通してなかっただろうと、政界関係者もマスコミも妙に納得している。

 いずれにせよ、小泉元首相の責任も追及してもいいはずなのだが、多くの人は森元首相こそがキーパーソンだと思っている。裏金システムは、それ以前の三塚派の時代からもあったかもしれないが、森元首相が会長のときに拡大したと証言する人が多いようだ。

 安倍元首相の死後、清和会が集団指導体制となり、森元首相を闇将軍化したことが、さまざまな問題で清和会と自民党が思い切った対処ができなかったことの原因だ。事務総長経験者に加えて、それ以上に森元首相に近いと言われる萩生田光一・前政調会長、世耕弘成前参院幹事長など安倍派五人衆の誰かが血祭りに上げられるのを避けたいという温かい気持ちだったのかもしれないが、これでは、全員がダメージを受けて再起不能になる。そういう気持ちはとくに若い議員に多い。

 もし森元首相が裏金システムを拡大したのであれば、ここは本人が「良かれかしと思ってしたが申し訳なかった」と、裏金の仕組みについて自分の責任を認めるしかなかろう。