ゆずの「友~旅立ちの時」、アンジェラ・アキの「手紙~拝啓十五の君に」、ほかにも「この地球のどこかで」「大切なもの」「最後のチャイム」「旅立ちの日に」、絢香の「サクラ」などなど。

 こうしたいわゆるJポップと呼ばれるヒットソングが卒業式で歌われるようになった最初が、昭和54(1979)年に発売された武田鉄矢が率いる海援隊が歌ってヒットした「贈る言葉」だったと言ってよかろう。

 これは当時、40%近い高視聴率を叩き出したTBS系のテレビの学園ドラマ『3年B組金八先生』の主題歌だった。

 鉄矢演じる金八先生がひとつひとつの事件や事柄に親身になって向かい合ってゆく、その「理想的な先生像」が老若男女問わず支持されたのだ。

 昭和52(1977)年、「男はつらいよ」の山田洋次監督から声がかかる。それが北海道を舞台にした映画「幸福の黄色いハンカチ」だった。彼の演技が光り輝いた。そしてそれが人生を変えた。日本を代表する俳優・武田鉄矢のスタートだった。

 映画の好演で注目を浴びた鉄矢は、その後いくつかのテレビドラマに出演、そして運命のドラマ「金八先生」に巡り合うのだ。

 そのドラマの歌が巣立ちの歌としてぴったりだったということで、この時期から卒業式で歌われる一曲となった。学生生活とのピリオドである。教師と生徒との卒業という名の別れ、理想的な教師だからこそ心に響いてくる、「去りゆくあなたへ、贈る言葉」なのである。