「フラペチーノ」も「チルドカップ」も
ブランド哲学の成果

 1995年に販売が始まったフラペチーノはそのひとつの成果でしょう。

 アイスコーヒーとアイスクリームやシロップ、ミルクからなるフラッペを融合させてひとつの商品にするというのは実にアメリカ的なアイデアで、伝統的な欧州のコーヒー文化ではないはずです。

 でも暑い夏に、そういうコーヒーを飲みたいと思っている顧客がいるのだから、それを届けるというのは新しいスタバのコンセプトとしては正解なのです。

 このブランド転換直後の1998年に、先述のイノベーションであるコーヒー成分の抽出技術が誕生したことが、現在、コンビニで売られているチルドカップなどのスタバ商品展開へとつながります。

 私もスタバを飲みたいのですが、残念ながら生活動線の中にスタバのお店がありません。ちょっと歩いて山手線の駅まで足を延ばしてようやく一軒みつかるくらいです。

 ですからコンビニでスタバブランドのチルドカップが購入できるのは顧客としては嬉しい。

 そこで冒頭の話に戻ります。セブン-イレブンに入店して、棚に置いてあるスタバロゴの入った乳飲料を選ぶのか、それとも本格コーヒーから作られるセブンカフェのアイスカフェラテを選ぶのか?

 味だけで選ぶのであればセブンのカフェラテを選ぶべきでしょう。しかし私が飲みたいのはスタバのカフェラテです。店舗で買えるものとは別物でもあの風味が味わえるのだからと、あえてコーヒーを選ばずにコーヒー牛乳を選択する私がいる。

 このように「品質が保てる限り、人々が一番飲みたいと思っているところへコーヒーを届けるべきだ」というブランド哲学から、スタバは種類別にはコーヒーではなく乳飲料であるチルドカップを全国のスーパーとコンビニエンスストアで販売しているのです。