理不尽に暴力を振るわれる身体的虐待は、最終的に出刃包丁で刺すまで発展したという。

「傷痕はうっすらとしか残っていないけど、お腹の横を包丁で刺されたんですよ。『お前は死ね! お前は死ね! お前は死ね!』って鬼のような目をして叫んでいました。本当に怖いよ。だからこんな話をしたくないんです。子どもの頃からずっと殴られているわけだから、なにをされてもなんとも思わないよ。

 ただ、毎日が絶望的で怖いってだけ。今日は痛かったとか軽かったとかあまり怖くなかったとか、感情みたいなものはそんな程度だよ。そういう人が親なんだし、そういう環境に生まれてきちゃったんだから、どうしようもない」

中2で実父に
奪われた

 あかねさんはライターの火をつけたり、消したり、箸を持ったり、置いたりを繰り返している。くすぐったそうな動きをして、なにか言おうとする。

「うん……まあ、昔のことだね。中学2年のときかな、ヤラれました。実の父親に」

「中学2年ってことは処女だよね」

「えぇ」

 性的虐待の話がはじまった。父親が26歳のときに、あかねさんが生まれている。現在、父親は73歳。団塊世代であり、大企業の支社に勤めるホワイトカラーだった。

「春休みだったかな。深夜だね。狭い家じゃなかったから自分の部屋はあった。で、父親が突然布団の中に入ってきたんです。夢かなと思ったけど、すぐに父親だってわかった。寝間着のズボンとパンツを一気に脱がされた。裾を押さえて抵抗したけど、どうにもならなかった。なにをされるのかわからなくてパニック状態だったけど、父親のすごく勃起したアレを見たとき、なにをしに来たのかわかりましたよ。

 とにかく怖くて叫び声をあげたい。だけど、隣の部屋には弟が寝ているし、母親に知られたら大騒ぎになる。私がなにをされるかわからない。息ができないくらい怖くて、もう震えるだけだった。父親は抵抗できないように私の胸を押さえて、ガッて脚を開かれて挿れられた。

 怖くて怖くて……なにがなんだかわからなかったよ。目を開けたら汗まみれになって変な声を出している父親がいて、痛いのと怖いのをとにかく我慢するしかなかった。なにも言わないで腰を振って、出したら部屋から出ていったよ」