幅広い層に向けて作られた
「つみたてNISA」

 ところが、いざ制度がスタートしてみると、一般NISAを利用しているのは60代や70代といった高齢者が中心で、積み立てによる利用者は、総口座数の1割以下でした。つまり、一般NISAは金融庁の意に反し、短期的な値上がりを求めてまとまったお金を一度に投資する人たちに使われたという現状がありました。

 そこで、もっと幅広い人たちが安定的に資産を形成できるよう、長期にわたって分散、積み立てができる制度として作られたのが「つみたてNISA」だったわけです。

 新NISAはこの点、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるという便利さがあります。これは、投資の自由度が増すということです。ただし、つみたて投資枠と成長投資枠を別々の金融機関で利用することはできず、同じ金融機関で利用しなければならない点には注意が必要です。

 投資対象となる金融商品は、つみたて投資枠が金融庁の基準を満たした投資信託であり、以前のつみたてNISAと同様となります。

 また、成長投資枠の対象となる金融商品は、国内株式、海外株式、投資信託、国内ETF・REIT、海外ETF等です。毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託を除外するなど、長期の資産形成に向かないものは対象外となります。つみたて投資枠よりも幅広く認められているのは、資産形成を中高年以降に始める人たちが比較的スピーディに資産形成ができるようにとの配慮です。

(3)年間投資枠が引き上げられた

 1年間に投資して非課税となる枠が引き上げられました。つみたてNISA40万円、一般NISA120万円であったのが、新NISAはつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円となっています。つみたて投資枠と成長投資枠を併用する場合、合計で360万円も投資することができます。もちろん、どちらか一方の利用でもかまいません。

(4)非課税で保有する限度額が引き上げられた

 非課税で保有する限度額も引き上げられています。これまでは、つみたてNISAが最大800万円、一般NISAが最大600万円でしたが、新NISAでは1800万円までになりました。ただし、限度額1800万円のうち、成長投資枠は1200万円となっています。

 この非課税保有限度額は買付け残高(簿価残高)で管理されます。そのため、NISA口座内の金融商品を売却した場合、その売却分が翌年になると非課税枠として利用できるようになっています。

 単純化して例示すると、NISA口座に限度額いっぱいの1800万円分の金融商品を保有していても、そのうち500万円分を売却したら、翌年にはまた新たに500万円分の金融商品の非課税枠を使って保有することができるのです。

 以前は非課税枠の再利用ができなかったため、利便性が上がったと言えます。予定外の出費で売却をしたい場合などでも、臨機応変に対応しやすくなったわけです。