「いまだにガイドラインを売っているんですね……」。某学会の書籍販売場所で耳にした、若手ドクターと思しき参加者の一言だ。目の前には平積みされたその学会発行のガイドライン。今はもう、ガイドラインは無償が当然なのだろうか。調べることにした。
その前に日本の診療ガイドラインの歴史を簡単に振り返る。「エビデンスに基づく医療(EBM)」診療ガイドラインが登場したのは四半世紀ほど前である。インターネットも普及していなかった時代なので、ガイドラインはもっぱら冊子体だった。そして少なからぬガイドラインが製薬会社に買い取られ、「謹呈」の帯をかけられて医師たちの手に渡った。つまりこの当時、発行を引き受けた会社にとってガイドラインは、結構「うまみ」のあるビジネスだったのだ。
しかし、時代は下り、ガイドラインをPDFファイルで無償公開する学会が増えてきた。先行したのは日本循環器学会だろう。現在でも、数多いガイドラインをすべて、無償で公開している。その一方、患者の多い疾患にもかかわらず、いまだに高額で販売されているガイドラインも存在した。実情を示そう。