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スマホ+タブレットが「ポストPC」たりえない理由

佐藤一郎 [国立情報学研究所・教授]
【第2回】 2013年4月23日
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 PC(パソコン)の時代の終焉は近いと、しばしばささやかれるようになっています。では、その次に来るポストPCとはどんなコンピュータだと思われますか?

 スマートフォンなのでしょうか、それともタブレットでしょうか。先のことはわかりません。ただ、ポストPCになるための要件があるとすると、それはPCよりも数多く売れるということです。

コンピュータの主役交代

 コンピュータは時代ごとに主役がありました。1970年代まではメインフレーム(汎用機)が主役でした。専用の計算機室に大きなコンピュータが鎮座していた時代です。メインフレームは高かったために、購入したのは大企業、それも規模が大きな大企業に限られました。

 そして1970年台後半にさしかかると、いまはなきディジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC) が開発したミニコンが主役となります。ミニコンはメインフレームと比較して安かったために、中小企業でも導入するところも多かったです。その結果、ミニコンの販売数は多く、例えばDECのミニコンVAXシリーズだけで40万台販売されたそうです。

 そして1980年代後半になるとPCがビジネスで使われるようになります。PCを購入したのは個人経営を含む小規模な企業に加えて、先進国の消費者という大きな市場を掴みます。その結果、PCの販売数はミニコンよりも多くなります。

 クレイトン・クリステンセン著『イノベーションのジレンマ』では、破壊的技術は当初は、玩具のように低性能だが、それが結果的には既存技術を凌駕していくという考察をしています。コンピュータの歴史はまさにイノベーションのジレンマに書かれている通り、破壊的技術によって主役が変わっていきました。

 実際、初期のミニコンはメインフレームと比べると性能が低くて玩具のような存在でしたが、売れるとともに性能が上がり、メインフレームの性能を凌駕していきました。ご存知のように初期のPCは玩具扱いでしたが、いまではメインフレームやミニコンの性能を凌駕していきます。

 これはコンピュータの主要要素、例えばプロセッサやメモリがLSIなどの半導体または半導体集積回路(半導体チップ)であることに起因します。チップの価格のほとんどは製造装置コストと回路設計コストが占め、逆に原材料費は微々たるものです。つまり、一度、回路を設計して、製造装置を揃えれば、あとはチップを作れば作るほど儲かります。だから、数が売れるチップほど利益が期待できるので、研究開発投資も潤沢になり、改良が進みます。逆に数が出ないチップは改良が止まります。

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佐藤一郎[国立情報学研究所・教授]

国立情報学研究所アーキテクチャ科学系教授。1991年慶応義塾大学理工学部電気工学科卒業。1996年同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻後期博士課程修了。博士(工学)。1996年お茶の水女子大学理学部情報学科助手、1998年同大助教授、2001年国立情報学研究所助教授、を経て、2006年から現職。また、総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻教授を兼任。
専門は分散システム、プログラミング言語、ネットワーク。


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分散システムの研究を核としつつ、ユビキタス、ID、クラウド、ビッグデータといった進行形のテーマに対しても、国内外で精力的に発言を行っている気鋭のコンピュータ・サイエンス研究者が、社会、経済、テクノロジーの気になる動向について、日々の思索を綴る。

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