「武蔵野」では、経営方針も、部門ごとの利益も、人事評価も、社長のスケジュールも、すべてがオープンです。

 目的や成果を明確に「見える化」することで価値観の共有ができ、不公平感がなくなり、社員のやる気が高まります。「やる気」というより、「やらざるを得ない気持ち」といったほうが正しいかもしれません。

「見える化」と「見せる化」はどう違うか

 しかし、「すべてオープンにする」といっても、結果を表示しているだけでは「見える化」とはいえません。それは「見える化」ではなく、「見せる化」です。なぜなら、「見える化」とは、結果だけでなく、「結果に至るまでのプロセスが含まれているもの」だからです。

 たとえば、デジタルで数字を上書きしていくのは「見せる化」です。データが書き換えられてしまえば、数字の変化を読み取ることができません。一方で、手書きのグラフは、「見える化」です。数字を書き足していくので、数値の変化や経過がひと目でわかるからです。

 ではなぜ、プロセスを見せる必要があるのでしょうか? 

 それは、プロセスがわからなければ、次のアクションを起こせないからです。

 「見せる化」の最たるものが「信号」です。

 信号は、「青」のときはアクセルを踏みっぱなしです。そして、「黄色」になったらブレーキを踏みます。でも実はこれ、間違いです。会社経営に関していえば、「黄色」は、急いで渡るのが正解。「黄色」=「注意をしながら渡れ」なんです。経営サポート事業部の会員は約300社ありますが、そのうち15社が2008年度に過去最高益を上げました。もちろん倒産はゼロ。なぜなら、会社が危なくなったときに、アクセルを踏み込んだからです。

 では「赤」信号はどうでしょう? 「赤」は停止ですが、まんぜんと前の信号を眺めていてはいけません。目の前の信号が赤のときは、「横の信号」にも目を向けておくんです。

 そして「横の信号」が青から黄色に変わったら、ブレーキから足を離し、アクセルを踏む準備。まもなく目の前の信号が「青」に変わりますから、すばやいスタートが切れるように準備しておきます。

 会社の経営も、クルマの運転も同じです。

 世の中の出来事は、いきなり「青」から「赤」に変わるのではなく、その間に「黄色」があります。「黄色」というプロセスがあるからこそ、いち早く次のアクションを起こすことができる。プロセスが見えるからこそ、人は「やらなければならない」気持ちになるのです。

 この連載では、「武蔵野」が取り組んできた「見える化」の仕組みについて、4回にわたりご紹介していきます。「自分の会社のことがわかっていない」、「経営方針が決められない」、「社員の気持ちがわからない」、「数字が読めない」などにお悩みの企業の皆様にお役に立てることを願っています。

 では、早速具体的な「見える化」の仕組みをご紹介しましょう。

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小山昇 [株式会社武蔵野 代表取締役社長]

1948年山梨県に生まれ、東京経済大学卒業後、日本サービスマーチャンダイザー(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して、自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。全国の経営者でつくる「経営研究会」主催。 日本経営品質賞受賞の軌跡、中小企業のIT戦略、経営実践塾、経営計画書セミナーと、全国で年間120回以上のセミナーを行なっている。
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