今後10年で、
失われた20年を取り返す安倍構想
アベノミクスを推進するにあたって、安倍総理は今後10年を日本経済の復活の時期と位置づけている。そのために、まずデフレからの脱却を実現し、それに続いて成長戦略によって日本経済をより高い経済成長経路に乗せることを想定している。
復活の10年という時期を設定したのは「失われた20年」があるからだ。その間、日本経済は低迷が続いた。国民も企業も守りの姿勢にこもってしまい、国内需要は不振が続いた。その結果として、慢性的な経済低迷だけでなく、デフレというさらに厳しい状況にまで陥ることになってしまった。
日本が「失われた20年」という罠に陥ってしまったのは、大きな経済環境の変化に対応できていないからだ。高齢化が進み、グローバル化のなかで近隣諸国の経済力が高まっている。こうした変化に対応して経済制度や産業構造を変える必要があるが、そのスピードが遅かった。アベノミクスの成長戦略に求められることは、こうした変化のスピードを速めることだ。
「失われた20年」からの脱却は重要な問題である。この点については、本連載でも今後詳しく論じていきたいと考えている。ただ、現時点までのアベノミクスの成果は、「失われた20年」からの復活ではなく、「失われた3年半」からの復活(あるいは脱却)ととらえたほうがよいように思える。
なぜ、日本だけが一人旅?
「失われた3年半」というのは、リーマンショック後の3年プラスαの期間を意味する。リーマンショックより少し前の日本経済の状況を整理してみると、株価はすでに相当上昇していた。物価上昇率もマイナス圏から抜け出してデフレ脱却が実現しそうな勢いであった。ところが、それらはすべてリーマンショックで破壊されてしまった。
リーマンショックは世界の多くの国の経済に影響を及ぼしており、日本だけが特殊なわけではない──そう考えている人は多いだろう。たしかにそうした面もある。しかし、日本だけが明らかに異なった動きをした面もあるのだ。