相手に寄り添った「プラスアルファのひと言」で、
心がつながる

「面接を終えたとき『今日はお時間を割いていただき、ありがとうございました』とお礼をする講師はたくさんいます。でもそれだけでは当たり前すぎて、印象に残りません。帰り際に『お茶ごちそうさまでした。とてもおいしかったです』と、気づかいのプラスアルファのひと言を付け加えたのは、松澤さんだけでした。お茶をほめた人はほかにいません。松澤さんがお茶をほめたとき、この人は違う…と、僕たちの心をつかんだんですよ」と。

 面接官は、お茶を出したときから、「応募者の反応を見ていた」そうです。

 私は、濁りのないまろやかなお茶をいただき、素直に「おいしい」と言っただけで、もちろん、そう言ったことも覚えてはいませんでした。

 けれど、その最後のひと言が、面接官の心に届いたのです。だれもが同じ程度の研修スキルを持っているなら、「良い印象が残った人を選ぼう」と面接官は考えたのでしょう。

「お茶ごちそうさまでした」のお礼は、だれもが言えることなのに、私しか言わなかった。その「別れ際の1秒間(ラストインプレッション)」が、面接官に小さな感動と余韻を残すことになった。だから、私が選ばれたのです。

「一杯のお茶」で、人生が変わることもあるのですね。

 店舗研修の一環として、店舗の本社から「覆面調査」を依頼されることがあります。顧客になり代わった調査員(=私)が、さまざまな店舗の接客対応をチェックするお仕事です。

 調査をしてみると、「この人から買いたい」「この人とまた会いたい」と思わせるスタッフには、「ある共通点」があることがわかります。それは、「相手の気持ちに寄り添ったプラスアルファのひと言をかけている」ということです。

 運動会を控え、姪のお弁当箱を探していた私に、「運動会、晴れるといいですね」とレジでひと声をかけてくれる店員さん。

 あるいは、スーツケースを持って移動する私に「出張ですか?お気をつけて」とひと言かけてくれる店員さん。

 病院では、待ち時間の長さに疲れた私に「病院に来るだけでも疲れてしまいますよね」といたわりの言葉をかけてくれる看護師さん…。