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対談 漂白される社会
【第8回】 2013年5月27日
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開沼 博 [社会学者],杉坂圭介

飛田新地も無視できない規制強化と価格競争
「漂白される社会」で飛田が歩むこれから
【スカウトマン・杉坂圭介×社会学者・開沼博】

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売春島や歌舞伎町のように「見て見ぬふり」をされる現実に踏み込む、社会学者・開沼博。そして、大阪・飛田新地の元遊郭経営者であり、現在もスカウトマンとして活躍する杉坂圭介。『漂白される社会』(ダイヤモンド社)の刊行を記念して、「漂白」されつつある飛田の現在・未来をひも解く異色対談。
第2回は、店舗型風俗の取り締まりが強化されるなかで新規経営者が増加する飛田の現状、スカウトマンの実態、そして、価格競争によるデフレ化が進む飛田のこれからが語られる。対談は全4回。

冷やかし客が増えた一番の理由

開沼 本の中でも書かれていることをもう一度聞かせてください。飛田には「裏に暴力団がいる」あるいは「警察と癒着している」というパブリック・イメージは根強いと思います。しかし、具体的に調べても、その明確な根拠は必ずしもありません。その実態について杉坂さんはどうお考えですか?

杉坂圭介(すぎさか・けいすけ) 大阪府出身。繊維製品卸問屋勤務を経て、飛田新地の料亭経営者へ。10年間店の経営に携わった後、名義を知人に譲り現在女の子のスカウトマンとして活躍している。著書に『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』(徳間書店)がある。
現在、次回作を執筆中。年内発売予定。

杉坂 おそらく癒着はないと思います。ただ、親交を図るためにも、組合の役員の方が毎日のように警察に行っておられます。ヤクザについては、裏の裏で、経営者がまったくのプライベートで会われているかどうかはわかりません。ただ、基本的にはありません。

 もしヤクザが店なんかに出入りしたら、「廃業、除名するぞ」と言って、警察が取り締まらなくても組合があっという間に取り締まります。昔は、お店の用心棒さんが店の前まで来てのトラブルはあったみたいですけど、いまは街の中でヤクザが店に出入りすることはないですね。

開沼 なるほど。飛田にやって来るお客さんの質の変化はありますか?前回のお話にもあった通り、ネットで調べればだいたいの雰囲気はわかるようになって、これまでよりも気楽に行ける場所になっている側面など。

杉坂 冷やかし客はたしかに増えましたね。あんなに色っぽい女の子を4周も5周もただ見るだけで、ヌかずに帰ることが逆に不思議だなと思います。僕には考えられません(笑)。

開沼 冷やかし客が増えた理由は、具体的になぜだと思いますか?

杉坂 結局、お金がないのが一番でしょうね。それと、飛田は風俗の中では高いですから。当たっているかはわかりませんが、うちの女の子をさんざん見て、60分3000円のヘルスに行くとか、あるかもしれないですよね。

開沼 飛田の価格帯は変わっていないにしても、周囲がデフレ化した結果、相対的に「高価だ」ということになってしまった、と。その一方で、2000年代に入ってから街の風景がだいぶ変わったようですね。

杉坂 街並みはきれいになりましたね。これも賛否両論なんですけど、街は明るくなりました。ただ、僕らの街が明るくていいのかなとも思いますし、暗い道で店の看板だけが明るいほうがいいのかなという気もします。

開沼 街が変化する一方で、同業者の方の顔ぶれの変化についてはどう感じていますか?高齢化しているとか、世代交代があったとか。

杉坂 だいぶ若返りましたね。

開沼 そうですか。

杉坂 20代~30代前半の女の子が経営している店が結構多いですよ。あるお店の女の子が独立するわけです。本当に自分でやってんのかなと思いますけどね。その子が自分で金を貯めて独立したのか、働いていたお店の親方(経営者)が金を出して独立させているのか、そこはわかりません。

 でもこういう世界は、おっさん経営者より、20代の女の子のほうが女の子を集めやすいかもしれないですね。50歳を過ぎている経営者で、女の子を自分で探せる方はほとんどいません。噂ですが、30代のホスト系の経営者が、上の世代の経営者に女の子を回してるというのは聞いたことがあります。生き残るための“年貢”じゃないですけど、女の子を預けることで自分の存続を守ろうとしてるんじゃないですかね。

開沼 古い街並みのイメージがあるからかもしれないですが、外から見ていると、飛田といえば昔からずっと「飛田の住民」として生きてきた人が経営しているようにも想像してました。ただ、そうでもないんですね。

杉坂 昔の時代の方は、自分で女の子を探すのは無理だと思いますよ。いま、飛田7割くらいは人頼みじゃないですか。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 

杉坂圭介(すぎさか・けいすけ)

大阪府出身。繊維製品卸問屋勤務を経て、飛田新地の料亭経営者へ。10年間店の経営に携わった後、名義を知人に譲り現在女の子のスカウトマンとして活躍している。著書に『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』(徳間書店)がある。

 


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売春島、偽装結婚、ホームレスギャル、シェアハウスと貧困ビジネス…好奇の眼差しばかりが向けられる、あるいは、存在そのものが「見て見ぬふり」をされる対象に迫り続ける社会学者・開沼博。『漂白される社会』の刊行を記念して、人々を魅了しつつも、社会から「あってはならぬもの」とされた対象やそれを追い続ける人物と語り合うことで、メディアでは決して描かることのない闇の中に隠された真実を炙り出す。

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