新規参入が増加する飛田の現在

開沼 著書によれば、飛田では店舗数が減少した時期があって、そのときには、お客さんも少なくなった時期もあったようですね。ここ数年の傾向はどうですか?

杉坂 飛田では増えてます。

開沼 そうですか。それは新規参入者が店を開業しているということですか?

杉坂 そうですね。最近では、空き地を潰して新しい店が3軒できました。それから去年、廃墟になってるホテルを潰して6軒が建ちました。あとは一昨年だったかな、大きなお店の経営者さんが廃業して、1つのお店を2つに分けて2軒建てましたよ。昔は大きな店が多かったんですけどね。全部で160軒くらいだと思います。

開沼 増えているとは意外でした。『漂白される社会』にも書きましたが、ほかの多くの地域ではあらゆる店舗型風俗が消え、すでにある店が辛うじて残っている状況ですから。

杉坂 法律上、店舗型風俗が認められなくなって、ホテルヘルスも新規参入できないですからね。飛田だけはいまでも認められているので、新規開業することが可能です。

開沼 それは日本全体の流れからすると、特殊な事例のようにも見えます。近年の傾向では、「とりあえず店舗型風俗を取り潰していこう」という動きのなかで、いわゆる「援デリ」のように地下に潜る形での違法風俗や、JKリフレのように法律スレスレのサービスを行う業態が増えています。

 しかし、地下化すること、あるいはグレーな業態が生まれては規制し、生まれては規制し……というイタチごっこを繰り返していくことで、新たな問題が生じるリスクが増すという側面もあると思います。それは、権力が自ら掌握できる範囲を増やそうとすればするほど、権力が掌握できない範囲が増えていくという逆説的な状況です。取り締まりができなくなったり、凶悪犯罪の温床となることも考えられますよね。

杉坂 実際、店舗型にすると犯罪が起こりにくいんですよ。

開沼 警察も管理しやすいと。

杉坂 ただ、最寄りの「動物園前駅」から飛田に来るまでに商店街がありますけど、最近になってそこに異様なほど居酒屋ができてるんです。店員さんはみんな中国人の若い女の子。事実はわかりませんが、女の子とお客さんが2人で外に出て行く光景をよく見かけるようです。飛田に来る前に上前を撥ねているのかなという感じですね。

開沼 なるほど。

杉坂 それは闇の部分ですから、あんまりしてほしくないことです。最初はね、生活保護の人を飲みに来さすために、中国人を使って、安い金額で店をやるんかなといった話でした。それが1店舗でき、2店舗でき、3店舗でき、いまでは10店舗以上できてると思うんですよ。

開沼 そうした動きに対する取り締まりは?

杉坂 いまは何にもないです。僕も噂で聞いてるだけで、僕自身が女の子と客が出て行くのを見たことはないんですけど、周りの人間は「よく見る」と言っていました。今はスカウト業なので、飛田に毎日いるわけではないんでね。