第1位
『いまここで決断することを決断できないから』

 それでは1位から発表しよう。
「決断できない理由」第1位は、【いまここで決断することを決断できないから】である。

 実のところ人間は、どのような決断をしたらいいのかに悩むのではなく、本心では決断すること自体から逃げたいのだ。
 その理由はたったひとつしかない。
 それは、決断した以上、その瞬間から過去と違う何らかのことをスタートしなければならない。それが面倒なのだ。

 ただそれだけである。

 それを理解せず、なぜ決断できないのだろうかと自分を責めたり、誰かを説得しようとしても意味がない。
 したがって、「どうしても決められないのか?」と言っても、相手から「なぜいまここで決めなくてはならないのか?」と、いちいち「いま決めなくてはならない理由」を質問されてしまうのだ。

「もっとじっくり考えてからでもいいではないか」
「焦って決めるとロクなことがない」

 と、とにかく、いまこの瞬間に意思決定をすることから逃げようとする。
 この心の働きを理解できないと、決断力のない人を誤解してしまうことになる。

第2位
『他にもっといい方法があるような気がするから』

「決断できない理由」第2位は、【他にもっといい方法があるような気がするから】だ。
 これは本書でも紹介している「直感の罠」のひとつ「確実性の罠」のことだ。

 人間は100%確実な方法(メソッド)をどうしても探そうとしてしまう。
 不確実性要素が強い場合は、特にそうだ。
しかし、100%確実に成果の出る方法は存在しない。
マネジメントはPDCAサイクルで表現できる。
つまり、100%確実に結果が出る方法が存在するのであれば、「PDCA」ではなく「PD」だけでよい。計画を立てて実行するだけで結果が出るのだから。

 定期的にモニタリングする必要もないし、自分や組織の行動を振り返り、改善することもなくなる。
 だが、それは絵空事だ。
 現時点で選択肢としてあげられているものの中からよりよい方法をチョイスする決断が必要なのだ。

第3位
『焦って決断すると、かえって問題が悪化してしまうと思うから』

「決断できない理由」第3位は、【焦って決断すると、かえって問題が悪化してしまうと思うから】

 これも本書で紹介している「直感の罠」のひとつ「リスク過敏のワナ」だ。
 リスクに対して過剰に反応してしまう「認知バイアス」である。

 これまで実践したこともないことをやろうと決断するとき、ついつい決断後の発生リスクを過剰に受け止めてしまうことがある。
 この「直感の罠」に引っかかっている人は、現状維持のままにしておくことで、どのような問題が発生するのか。そしてその問題が発生するリスクについて考慮していない。
 決断を先送りにし、現状維持のままにしておくリスクほど大きなものはないのである。