第4位
『他の人の意見も参考にすべきだから』

「決断できない理由」第4位は、【他の人の意見も参考にすべきだから】。典型的な「決断できない人」の言い分である。

「課長、そろそろ決断してください」
「うーん、俺の意見もいいけど、部長はどう思っているのかな?部長には聞いてみた?」

 と、他の人の意見をまず聞いてからでないと、自分の意見を言えない人がいる。
 こういう人は、困ったときに「民主主義」の正統性を持ち出す。いわゆる「多数決」だ。
「決定打」がないとき、なんでもかんでも「多数決」で決めようとする人がいるが、集団になればなるほど正しい判断ができなくなる「集団的無能状態」に陥る可能性も念頭に置いたほうがいい。

 過半数の人が賛成したからといって、合理的な判断がされたとは限らない。
 まずは何が正しいのか、論理的に判断する材料を持つべきである。
 決断した内容を吟味するのではなく、いつのときも評価すべきは「決断プロセス」である。

第5位
『その方法でうまくいったと聞いたことがないから』

「決断できない理由」第5位は、【その方法でうまくいったと聞いたことがないから】

「聞いたことがない」「見たことがない」という表現をする人がいる。
「そんなことをして結果を出したなんて話、聞いたことがない」
「そういう計画をやってうまくいったという人など、見たこともない」

 こういう表現だ。
 なぜこのような発言が出るかについては、物事のある一部分にのみ焦点を合わせ、その一部分が全体だと思い込む「一般化」という心理現象を知っておく必要がある。

「一般化」というのは、俗に言う「レッテル」のことである。
 物事に対して偏った体験しかないと、物事を包括的にとらえる力が衰え、先入観から脱却できなくなる。そして、あまりにシンプルに物事を見ようとしてしまうがためにレッテルをはってしまうのだ。
 物事にレッテルをはってしまえば、先入観という名のフィルターを通して物事を見ているわけだから、合理的な判断力を失っていくのは当然だ。

 意思決定をするうえでは、いかにして「その道のプロ」の意見を参考にするか、である。過去に膨大な数の体験があって初めて、人は「プロフェッショナル」と呼ばれるようになる。
 プロと呼ばれる人は、物事にレッテルをはるなどという習慣はないからだ。

第6位
『過去に実践してみたが、うまくいかなかったから』

「決断できない理由」第6位は、【過去に実践してみたが、うまくいかなかったから】

「過去にやってみたが、うまくいかなかった。だからその方法を選択しない」と言う人がいる。
 このフレーズは、現状を現状のままにしたいという心理欲求「現状維持バイアス」にかかった管理者クラスの常套句である。
 まさに「思考停止状態」。脳が機能不全に陥っている可能性がある。

 現場に入って実態調査を繰り返した結果、次のことがわかった。
 管理者が「過去にやったことがある」と言っても、実際は、

(1)過去、その行動計画をスタートし、ある一定期間やりきり、正しく評 価・改善を繰り返した。
(2)過去、その行動計画をスタートはしたものの、最後までやりきることなく、いつの間にか立ち消えた。
(3)過去、その行動計画は存在したものの、スタートはしていない。

 このどれかであるということだ。
 この中で最も多いのが、(3)だ。
現場の人にヒアリングすればすぐにわかる。

「計画について聞いたことはありますが、実際に動いた人はいないんじゃないですか?」
「朝礼で部長が指針を示していましたが、その後どうなったかわかりません」
「そんな計画があったんですか?初耳です」

 実行に関わるはずの現場の人たちがこのように口をそろえるのに、
「横山さん、あなたが言っていることは、以前わが社も取り組んだのですが、全然うまくいきませんでした。わが社にはそういうのは合わないんじゃないかな」

 と、管理者たちが口をそろえるのである。
 これは、ただの「現状維持バイアス」である。
 変化したくないから、やりたくない。それだけの話なのだ。