ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
日本を元気にする経営学教室III

ものづくり企業のサービス価値創造(後篇)
ロールス・ロイス社のサービサイジングの事例
――神戸大学大学院経営学研究科教授 松尾博文

――シリーズ 「オペマネの思考法」(6)

松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授],滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]
【第10回】 2013年6月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「オペマネの思考法」を解説するシリーズの第6回目。今回はものづくり企業のサービス価値創造の後篇として、サービサイジングというこれからの日本の製造業のキーワードを概説する。神戸大学経営学研究科SESAMIプログラムで、サービサイジングの授業を担当していただいたウォートン・スクールのモーリス・コーヘン先生の講義録をもとに、売り切りのビジネスモデルから、ものを介して、サービス価値を提供するモデルへ移行する意義と、そこでどんなノウハウが必要となるかを解説する。

 サービサイジングとは、製造業が従来のものを売るだけの売り切りビジネスモデルから、製品を介したサービス価値提供のビジネスモデルに移行することをいう。マクドナルドのようなファーストフード店が急成長した過程で、サービス業であるレストランが、製造業におけるような製品の標準化、効率を追及したアプローチを適用したことをサービスのプロダクタイゼーションということがあるが、その双対にあたるコンセプトである。

 サービサイジングは別に新しいコンセプトではない。私が受講した1979年のMITスローンスクールのピンダイク先生のミクロ・マクロ経済の授業で、ポラロイドは、インスタント・カメラを低価格で提供しているが、フィルムの販売で定常的なキャシュ・フローを得ているというプライシングの講義を聞いた覚えがある。最近の例だと、コピーのプライシングが典型的なものであろう。ものであるコピー機自体は高くはないが、補充部品であるトナーは高くつき、使用頻度に応じて継続的に支払っていく必要がある。

サービサイジングと経営環境

 サービサイジングが日本の製造業にとって重要な意味を持つようになってきたのは、経営環境の変化のためである。ビジネスのグローバライゼーション、製品のコモデティ化、サステイナビリティ。こういう潮流に対応するために、サービサイジングということを真剣に考える必要がある。

 ウォートン・スクールのコーヘン先生に授業を担当していただいた神戸大学経営学研究科のSESAMIプログラムを、「オペマネの思考法」の実践の事例として紹介する。このプログラムは、私がディレクターをしているのだが、研究教育環境のグローバル化に対応して、海外の多数の研究教育機関と戦略的連携をする現状維持ではない新しい研究教育プロセスとなっている。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

まつお・ひろふみ
京都大学工学部数理工学科卒業。1984年米マサチュ-セッツ工科大学大学院経営学研究科博士課程修了。米ペンシルバニア大学経営大学院客員準教授、米テキサス大学オースティン校経営大学院教授(Fred H. Moore Professorship)、筑波大学社会工学系教授を経て、2004年から神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻はオペレーション・マネジメントとサプライチェーン・マネジメント。国際的学術雑誌の論文多数、編集委員を歴任。現在、日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会会長。

滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]

たきなみ じゅんいち/京都大学工学部卒業、同大学院応用システム科学修士、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)。東レ株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年より現職。2010年より同社コンサルティング部門責任者。医薬品、消費財、流通、情報通信等の幅広い業界に対し、グローバル人事制度構築、リーダー育成、M&A支援等、幅広いコンサルティングを実施。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

⇒バックナンバー一覧