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日本経済の憂鬱
【第4回】 2013年7月3日
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佐和隆光

日本ではうやむやな保守対リベラルの対立軸

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日本では政治家も有権者も、「理念」と「思想」にうとくなってきたようだ。2012年衆院選の民主党惨敗は、同党の経済無策、とりわけ野田政権の消費税増税に起因するとみてよい。正統派リベラル政党ならば、フランス大統領のオランドとおなじく「雇用と成長」を金看板にかかげ、富裕層への所得増税により、所得格差の縮小と財政赤字の削減をめざすべきだった。果たして、続く安倍政権は…?

「成長と雇用」そして弱者救済

 2013年衆院選で、民主党が大敗を喫した最大の原因は、初回で述べたとおり、民主党の執行部が、デフレとゼロ成長に苦吟(くぎん)する寡黙な大衆へのシンパシーを決定的に欠いていたことにあったのではなかろうか。

 欧米先進諸国では、保守主義者は財政規律を重視し、社会保障費を必要最低限まで切りつめようとする。また保守主義者は、財政政策の有効性を否定し、「小さな政府」を志向する。他方、リベラリストの政策は失業率の低下を、そのための経済成長を第一義とし、財政金融政策の有効性を信じて疑わない。個人所得税制の累進度を高め、税収を確保しつつ、社会保障の充実により富の再分配に努めるのが、欧米のリベラル政党が共有する政策綱領である。

 一例を挙げよう。

 2012年5月8日にフランス大統領に選ばれたフランソワ・オランド(1954〜、在任2012・5〜)は「成長と雇用」を金看板とする公約をかかげ、「年収100万ユーロ(約1億3000万円)以上の高額所得者の最高限界税率を現行の41%から75%に引き上げる」という構想をうちだした。ところが、憲法評議会が「最高税率75%は憲法に定める『税の平等』を逸脱する」として違憲判決をくだしたため、「従業員に年収100万ユーロを超える給与を支払った企業に対して、税率75%の富裕税を課する」と、課税対象を個人から企業に変更することにより、違憲判決をまぬかれる挙にでた。

 富裕層の所得増税の方針をうちだしたオランド政権が発足して間もなく、100名を超える高額所得者がベルギー国籍を取得し、有名な俳優ジェラール・ドパルデュー(1948〜)は、所得税率が一律13%のロシアの国籍を取得した。なお、フランス、ロシアともに二重国籍を認めている。ただし、どちらの国に所得納税するかは、選択の自由にまかされている。

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佐和隆光(さわ・たかみつ) 滋賀大学長。京都大学名誉教授。専攻は計量経済学、エネルギー・環境経済学。経済学博士(東京大学、1971年)。

1942年和歌山県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了後、同大学助手、1969年に京都大学経済研究所助教授、スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授などを経て80年より京都大学経済研究所教授。京都大学経済研究所所長、京都大学大学院エネルギー科学研究科教授、国立情報学研究所副所長などのほか、国民生活審議会、交通政策審議会、中央環境審議会の各委員を歴任。1976年よりEconometric SocietyのFellow。1995年より2005年まで環境経済政策学会会長。2007年11月紫綬褒章受章。『計量経済学の基礎』(東洋経済新報社、1970年度日経・経済図書文化賞受賞)をはじめ、『経済学とは何だろうか』(岩波書店、1982年)、『平成不況の政治経済学』(中央公論社、1994年)、『漂流する資本主義 危機の政治経済学』(ダイヤモンド社、1999年)、『グリーン資本主義』(岩波書店、2009年)など著書多数。


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