2012年4月27日に自由民主党憲法改正推進本部が決定した「日本国憲法改正草案」には、次のような改正が明記されている。
・天皇を「象徴」から「元首」に改める(第1条)。
・国旗は日章旗とし国歌は君が代とし、日本国民は国旗と国歌を尊重しなければならない(第3条)。
・内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を設置し、集団的自衛権の発動、領土・領海・領空を保全するための自衛権発動を認める(第9条)。
・基本的人権は、侵すことのできない永久の権利ではあるが、自由と権利には責任と義務が伴うことを自覚し、常に公益と公の秩序に反してはならない(第12条)。
・すべて国民は「個人として尊重される」とあるのを「人として尊重される」にあらためる(第13条)。
・集会、結社、言論、出版その他一切の表現の自由は保障されるのだが、公益と公の秩序を害することを目的とした活動をおこない、それを目的として結社することは認められない(第21条)。
君主国では君主が、共和国では大統領が元首である。日本国憲法に規定はないが、国際慣行上は天皇が元首として扱われているため、第1条の改正に問題はない。国旗や国歌について定める新条文も許容範囲内である。第9条の改正は想定内である。
だが「公益と公の秩序」が基本的人権の行使や表現の自由を制約しうるという第12条と第21条の改正には、自由主義、民主主義、個人主義という近代西欧の思想を尊重する私は脅威を感ずる。
「公益」や「公の秩序」がなにを意味するのかは不明である。その時どきの政権の意向にしたがって、それらの意味が定義されるのだとすれば、ファシズムまがいの政治体制の再来をまねきかねない。しかも、第13条の「個人」を「人」におきかえるのも、自民党が個人主義の蔓延を危険視していることを裏書きするかのようで気味が悪い。
アベノミクスは自由と民主主義をおびやかす21世紀の新たな敵か
自由民主党の「日本国憲法改正草案」をつらぬく基本理念は、自由主義、民主主義、個人主義の抑制、すなわち「近代の超克」の再来のように見受けられる。アベノミクスの正体は国家資本主義の再来にほかならない。安倍首相がねらう憲法改正とアベノミクスはおなじコインの両面の関係にありそうだ。