法人課税の重さを計る指標として通常用いられるのは、「実効税率」だ。この指標を用いて、「日本の法人課税の負担は重く、経済活性化のために法人税を減税すべきだ」との主張がなされる。

 ところで、「実効税率」の分母は、税務上の利益だ。しかし、分母に企業会計上の利益を取ると、負担率はかなり低くなる。

前回は、これについてのマクロ的な数字を示した。結論は、実際に支払っている法人税等の負担率で見ると、全産業で19.8%、製造業で24.3%だ(法人税等調整額を加えた負担率で見ると、全産業で24.5%、製造業で29.7%)。これは、実効税率の数字35.64%に比べると、かなり低い。

個別企業の法人税等負担の実態

 分母に企業会計上の利益を取った場合のマクロ的な負担率は、公表統計からはわからない。そこで、前回は、一定の仮定を置いて推計した。この仮定は妥当なものと思われるが、仮定であることは事実だ。

 そこで、この推計を補完するものとして、個別企業の実態を決算で見よう。

 各社の決算短信等によって、法人税等負担の課税前当期純利益に対する負担率をいくつかの企業について見ると、以下のとおりだ(図表1参照)。