次世代のリーダーには何が必要か?
――学校では教えてくれなかった3つのバリュー

カタチの見えないプロジェクトへ仲間を突き動かした<br />3つのバリューとは?<br />――小さな成功体験の積み重ねと共有で、チームは進化する<br />【ISAK代表理事 小林りん<br />×ビズリーチ代表 南壮一郎】(後編)南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。2007年、株式会社ビズリーチを設立。エグゼクティブ向けの転職市場に特化した、日本初の個人課金型転職サイト「ビズリーチ」を運営。2010年、プレミアム・アウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を開始。2012年、ビズリーチのアジア版「RegionUP(リージョンアップ)」をオープン、2013年2月、IT・Webスペシャリストのための仕事探しサイト「codebreak;(コードブレイク)」ベータ版をオープン。

 仲間たちに「刺さった」、ISAKの核となるポイントは何なんでしょう?

小林 大事にしたいポイントは3つあります。1つは「多様性」。生徒は最終的には学校を出て社会に巣立っていきますが、その際に一番大切なのは、混沌としている世の中で、あらゆる価値観やバックグラウンドの人ともきちんとコミュニケートできて、かつ、そこでリーダーシップを発揮することができる力だと思うんです。でも、教育現場ではなかなかそれを教えられない。だから私たちは、もちろんインターナショナルスクールだから国籍の多様性も大切ですが、「奨学金」をものすごく大事に考えているんです。

「インターナショナルスクール=高い=富裕層のもの」というイメージがあるけれど、それではいけない。社会においては経済的、社会的なバックグラウンドや宗教観の差があり、それを学校の中に実現するには絶対に奨学金が必要だと。最低限2割の生徒には奨学金を用意したい、できれば開校までに5割まで引き上げたいと奔走しているところです。優秀で志がある生徒なら誰にでも門戸が開かれている学校になれば、本当の意味での多様性が実現できるんじゃないかと思っています。

 ポイントの2つ目は「問題設定能力」。これまでは、降ってきた問題をいかに上手に早く解くかという問題“解決”能力が大切だと言われてきたけれど、これからは、そもそも解くべき問題は何なのかとか、今まで顕在化していないニーズがどこにあるのかとか、そういうことを嗅ぎつけられる能力がすごく大事だと考えています。これは、今ビジネスの最前線にいる人たちに共感いただいているポイントです。

 3つ目は「リスクテイカーであること」。これも教育現場では逆行していて、リスク回避を是としている。そもそもISAKのミッションは、日本やアジア太平洋地域、グローバル社会のために変革を起こせる人材を育てることであり、生徒には政治家やCEOにならなくとも、どんな業界のどんな立場でもいいから変革者でいてほしいと考えています。では、変革者とはどういう人か? その答えの1つがリスクテイカーなんです。

 問題設定能力やリスクテイカーであることを学校で教えるのは難しそうですが、どうやって教えるんですか?

小林 たとえばサマースクールでは席順とか配膳係とか何も決めずに、生徒に食堂を自主運営させます。最初はカオスになって「決め方」さえ決まらない状況のなか、生徒は自分たちで失敗を重ねながら学んでいく。日常の様々な場面で、生徒自ら判断し、チャレンジすることを通じて多くを学んでほしいから、ISAKは全寮制なんです。

 これからは私たちが生きてきた過去とは全然違う世界が開かれていくはずですが、この3つのバリューの大切さは変わらないと思います。でも、これまではそれほど大事にされてこなかったし、これまでの学校教育では教えられてきませんでした。だからこそISAKでは、この3つを丁寧に教えていきたいと思っているんです。