米系企業を中心とした国際的な租税回避がG8で取り上げられるなど世界的な問題となっている。一方、個人の世界でも、株式などの含み益を持つ富裕層が自国を出国した後で譲渡益(キャピタルゲイン)を実現させる租税回避が見られる。多くの国は「出国税」を導入し租税回避をけん制しており、わが国でも検討が始まろうとしている。

非居住者になれば
株式譲渡益課税は回避できる

 株式などの巨額の含み益を抱えているわが国の富裕層(日本の「居住者」)が、シンガポールなどキャピタルゲイン課税のない国に出国し、その国の居住者(日本の「非居住者」)となって後に、保有する株式などを売却して巨額のキャピタルゲインを得る事例が増えているという。

 わが国の税法では、ひとたびわが国を出国して「非居住者」となれば、不動産化体株式といった特殊な場合を除いて、その実現した株式譲渡益については、その者がわが国に恒久的な施設(PE)を持たない限り課税されない。

 居住地国ではその国の税率で課税されることになるのだが、シンガポールや香港には株式譲渡益課税はないので、非課税で株式譲渡益を得ることができることになる。

 ITの発達で、非居住者となってもわが国の株式などを売買できる環境が整ってきているので、資産逃避を考える富裕層やそれを手助けするアドバイス業務も増えている。

 ではどうすれば、わが国の居住者がシンガポールなどの非居住者になれるのか。

 わが国税法の定める居住者の要件は、「日本国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」であり、この定義から外れれば非居住者となる。