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森信茂樹の目覚めよ!納税者

富裕層がシンガポール、香港に脱出
彼らの狙う租税回避をどう防ぐ

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第53回】 2013年7月12日
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米系企業を中心とした国際的な租税回避がG8で取り上げられるなど世界的な問題となっている。一方、個人の世界でも、株式などの含み益を持つ富裕層が自国を出国した後で譲渡益(キャピタルゲイン)を実現させる租税回避が見られる。多くの国は「出国税」を導入し租税回避をけん制しており、わが国でも検討が始まろうとしている。

非居住者になれば
株式譲渡益課税は回避できる

 株式などの巨額の含み益を抱えているわが国の富裕層(日本の「居住者」)が、シンガポールなどキャピタルゲイン課税のない国に出国し、その国の居住者(日本の「非居住者」)となって後に、保有する株式などを売却して巨額のキャピタルゲインを得る事例が増えているという。

 わが国の税法では、ひとたびわが国を出国して「非居住者」となれば、不動産化体株式といった特殊な場合を除いて、その実現した株式譲渡益については、その者がわが国に恒久的な施設(PE)を持たない限り課税されない。

 居住地国ではその国の税率で課税されることになるのだが、シンガポールや香港には株式譲渡益課税はないので、非課税で株式譲渡益を得ることができることになる。

 ITの発達で、非居住者となってもわが国の株式などを売買できる環境が整ってきているので、資産逃避を考える富裕層やそれを手助けするアドバイス業務も増えている。

 ではどうすれば、わが国の居住者がシンガポールなどの非居住者になれるのか。

 わが国税法の定める居住者の要件は、「日本国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」であり、この定義から外れれば非居住者となる。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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