このところ政府のベンチャー関連施策がいくつも発表されている。安倍政権の三本目の矢、つまり成長戦略の一環としてだ。
ベンチャーにこれだけスポットライトを当ててくれるのはありがたいことだ。しかし、施策が発表される度にベンチャー関係者の間では落胆の声が上がる。
たしかに、一部はヒドい。しかし、批判しているだけでは何も始まらない。ベンチャー関係者が口々に嘆き、バラバラに動くだけでは、日本のベンチャー政策の発展はない。見方を変えれば、今のベンチャー業界は変革すべきことが山ほどあるやりがいのある状況であり、サイクルを好転させれば、成果を得られる道もあるはずだ。
今回は、将来のベンチャーのエコシステム(生態系)をつくるために、政府施策のどこに問題があるのかを考えてみたい。
ちょっと待ってよ!
施策をバラバラ出さないで!
まず、報道されている施策の例をいくつか挙げよう。
■「総務省、米VCにIT研究者派遣 技術の事業化後押し」(2013/6/15 日本経済新聞)
大学や企業のIT分野の研究者をシリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)に派遣するそうだ。資金調達などを学んで、研究開発が事業に結びつかない現状を打破するとのこと。
これには大勢がひっくり返った。ベンチャーのことを大して知らないド素人を受け入れるVCなど、シリコンバレーにはない。あっても机を借すだけで、実際の仕事にはタッチさせないだろう。そもそも、研究者をVCに送るということの意味がわからない。
シスコシステムズやセールスフォースドットコム、マイクロソフトなどの事業開発部門に人を派遣した方が、ずっとためになるだろう。もっとも、それでも受け入れは容易なことではない。