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野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道

ここまで違う!ニューヨーク・タイムズと読売新聞における「世界経済混乱」の捉え方

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第34回】 2008年7月23日
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 昨年夏に始まった世界的な経済混乱は、終息するどころか、ますます深刻さを深めているように見える。この問題は、いくつかの側面を持っている。とりわけ、つぎの3つを区別することが重要だ。

(1)問題の発端は、アメリカの住宅ローン(モーゲッジローン)の一種であるサブプライムローンの債務不履行が増加したことだ。この数年顕著に値上がりを続けていたアメリカの住宅価格の動向が2007年になってから変調したことが、この問題の大きな原因になっている。

 モーゲッジローンは、証券化という手法によって新しい金融資産に生まれ変わり、これが投資対象とされていた。証券化されたものがさらに証券化されるなどの複雑な取引もなされた。しかし、その元になっているサブプライムローンの債務不履行が増加したため、証券化された金融商品が値下がりし、それに投資していたファンドや銀行の子会社などの資産内容が急速に悪化し、破綻に追い込まれるケースも増えた。こうして金融不安が一気に広まった。

(2)金融不安に対処するため、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利であるフェデラルファンド・レート(FFレート)を引き下げた。これによってドル安が進行し、アメリカの輸入物価が上昇した。また、サブプライム関連金融商品から逃げ出した投機資金が原油、食料などの商品市場に流れ込み、これらの価格を高騰させた。

(3)以上のような変化によって、住宅投資の減少、消費支出の減少、企業利益の縮小などが生じた。アメリカの景気後退は、不可避であると見られている。

時間の経緯によって
問題の把握が変化した

 時間の経過に伴って、問題の把握も徐々に変わってきた。最初の把握は、上記の(1)のようなものであった。すなわち、問題の中核は、サブプライムローンという特殊な住宅ローンの破綻であり、それに投資していた金融機関の損失であると理解されていたのである。その限りにおいて、問題は限定されたものであり、必要な対策は、損害を被った金融機関の救済や流動性確保の問題であると考えられた。FRBによる政策金利の引き下げは、このような理解からなされたものである。

 ところが、昨年末あたりから、原油価格や食料価格など商品価格の高騰が目立つようになった。問題の重点は上記の(1)から(2)にシフトし、世界的にインフレの危機が現実的なものとなってきたのである。インフレに対処する金融政策は、引き締めである。つまり、(1)の問題理解に基づく金融緩和とは逆方向の政策が必要とされるわけだ。したがって、金融当局は、深刻なジレンマに直面することとなる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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