クリティカルな頭脳労働に徹底的にこだわって、急激に成長を遂げた会社が1996年に設立されたソフトウェア会社のワークスアプリケーションズです。当初の公言通り5年で株式を上場、現在はMBOによって非上場化の道を選択しています。代表取締役最高経営責任者の牧野正幸氏にお話を伺いました。(写真・石郷友仁)

とにかく優秀な人材が
来てくれればいい

代表取締役最高経営責任者の牧野正幸氏(左)と筆者

本田 会社の方針は、優秀な人材しか採用しないこと。そして、人の成長に徹底的に投資することだそうですね。

牧野 世界的に有名なIT企業が、シリコンバレーのベンチャーと提携することになって、最初は驚いたんです。どうしてこんな聞いたこともない小さな会社と提携するのか、と。ところが、そのベンチャーは全員がとんでもなく優秀だった。そして欧米では優秀な学生ほど、ベンチャーに行きたがっていることがわかったんです。では、はたして日本に、そういう会社はあるかな、と思ったわけです。いい会社はたくさんあるかもしれない。でも、確実に自分が成長できて、優秀な人材だけが自由自在に仕事をしているような会社。ここに入って揉まれさえすれば、とんでもなく成長できる会社。そういう会社が日本には見あたらなかった。だから、作ることにしたんです。

本田徹底的に優秀な人材を集めれば、会社は成長する。それを実践し、社員が成長を自ら勝ち取る場としてのプラットフォームを作り上げたのですね。

牧野おかげさまで、Great Place to Workの「働きがいのある会社」ランキングの日本の調査では、5年連続ベスト4位に入りました。ただ、勘違いをされては困るのです。確かに社員は働きがいを感じていると思いますが、働きがいのある会社だと思って入ってくる人が増えると困ってしまう。調査に協力した一番の大きな理由は、社会からこの会社はいい会社だと思われたいということではなくて、社員がどう感じているかを社員にわかってもらいたかったからです。当社に適性がある人はすごく働きがいを感じると思いますが、そうじゃない人にとっては、働きづらい会社かもしれません。

本田会社に適性の合う優秀な人材を獲得するために、何かされているんですか?

牧野大学卒業後、社会人になり他社に行ったとしても期間内であれば”内定”が生きている「入社パス」。一度、退職しても戻って来られる「カムバックパス」。毎年4万人の応募がある大規模なインターンシップ「問題解決能力発掘プログラム」などの仕組みを作りました。

本田驚くような仕組みですね。優秀な人材獲得のための貪欲さ、そして投資には驚かされます。

牧野他の会社を経て当社の入社パスを行使する人も、少なくありません。3年後には、かなりの“入社パス”取得者が当社に入ってきていますね。とにかく優秀な人材が来てくれればいい。インターンシップは日当が出ますが、極言すれば、はじめは日当目当てです、でもかまわないですよ。私たちとしては、とにかく優秀かどうかを、徹底的に見極めたいんです。

 IT企業でこれだけ優秀な人材にこだわっている会社は他にはない、と牧野氏は断言します。頭脳労働にこだわった、こういう会社もあるのです。