ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道

せめて「ローテク電子政府」を作ってほしい

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第9回】 2008年1月21日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 国税庁のホームページには、所得税の確定申告書作成コーナーがある。

 確定申告書の作成には、他欄からの転記や合計の計算、さらには税額表を参照しての税額の計算など、単純ではあるけれども間違いやすい作業が多い。ホームページで提供されている様式に記入してゆけば、こうした作業での間違いがなくなる。

 たとえば、「扶養控除」については、別に記入ページがあり、そこに必要事項を記入していけば、扶養控除の額を自動的に計算してくれる。また、「特定扶養控除」の対象になるかどうかを、記入した生年月日のデータから判定してくれる(だいぶ昔の話だが、特定扶養控除対象者がいたにもかかわらず、うっかり通常の扶養家族として申告していた。数年たってから気づいたのだが、遡って認めてもらうことはできなかった。そのときこのサービスが利用できていたら、税金の払いすぎはなかったはずだ)。

 また、各種の控除について、金額をいちいち他の資料で確かめなくともすむので、便利だ。さらに、各項目ごとに「よくある質問」が設けられている。たとえば、「一時所得とはどのような所得であり、その額をどのように計算するか」「医療費控除はどのような経費が対象となり、申告にあたってどのような書類を用意する必要があるか」などについて、ポップアップメニューで答えが簡単に分かるようになっている。

 また、いちど作成したデータは保存しておけるので、翌年の作業の参考にもなる。

 ここで作成した申告書を、ただちに電子申告することはできない(電子申告のためには、電子証明書とICカードリーダライタを取得し、ソフトをインストールする必要がある) 。しかし、このコーナーを用いて確定申告書を作成できるだけでも、納税者の作業負担は大幅に軽減される。

先ず隗より始めよ

 ここには、「電子政府」のあり方を考える際の重要な視点が含まれていると思う。

 第8回で述べたように、アメリカにおける電子政府の実態は、驚嘆すべきレベルになっている。そこで紹介したIRS(アメリカの国税庁)の還付額問い合わせサービスはその例だが、こうしたサービスを提供するには、大掛かりなシステムの整備が必要だ。そして、日々の運用にも大変な労力が投入されているに違いない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
野口悠紀雄氏の最新刊「円安バブル崩壊」好評発売中!

急激な円高と止まらぬ株価下落。日本経済はいまや深刻な危機に。「サブプライムショック」はあくまでも引き金に過ぎない。根本的な原因は、あり得ない円安・低金利政策にある。経済政策の無能を厳しく指弾する痛快経済エッセイ! 1680円(税込)

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道

本当に使える情報源を求めて、野口教授が広大なインターネット・ワールドを駆けめぐる。各種情報源の特徴から使い勝手まで、辛口コメントを交えて大公開!

「野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道」

⇒バックナンバー一覧