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逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

其の49「論語」を読む。
ブラック企業の理念集に書かれた孔子の言葉

江上 剛 [作家]
【第49回】 2013年9月3日
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 あるブラック企業と世間から叩かれている会社の企業理念集を友人に見せてもらった。細かい字で200ページ以上あるから、とても全部読めたもんじゃない。でも社員は、この理念集のテストがあるらしいのであちこちにアンダーラインが引いてある。ここがテストに出るのだろう。

最初のページに孔子の言葉

 最初のページになんと孔子の言葉が出ていた。

子曰わく、民はこれに由(よ)らしむべし。これを知らしむべからず。
(先生が言われた、『人民は従わせることはできるが、その理由を知らせることはむつかしい』)
(泰伯第八 論語 金谷治訳注 岩波文庫)

 その理念集によると、

 「『民衆というものは服従させておけばよいのであって民衆に智恵をつけてはいけない。民衆に知らせてはいけない』と間違った解釈をする人もいますが、本当は『民衆というものは、なかなか本当のことを理解させようとしても理解できないものである。だから政治家はとにかく、理由の何たるを問わず、あの人の言うこと、あの人のすることならば間違いはないであろう、私はあの人を信じてあの人に任せる、というふうに信頼される人間になれ』という意味です。」

 と解釈され、すぐこう続く。

 「何でもかんでもとは言いません。今まで全社員が真面目に取り組んできたこと、そして信頼できる上司が『やろう』と言ったこと、大変だけどやらない理由の見つからないこと。そんなことには疑問を持たずに、真正面から取り組む社員であってほしいなと思います。」

 「良いこと言うよね。これでなぜブラック企業なの?」

友人「孔子の言葉って短くなればなるほど難しいですよね。宇野哲人『論語新釈(講談社学術文庫)によると『聖人は人に教えるためには家ごとに説明してまわることを欲しないのではないけれども、一般の人民には理由を話してもわからないから、ただ人の行うべき道によって違わないようにさせるだけである。』と解説されています。要するに説明しても道というのは理解されないから、聖人がその道を歩むことで教えなければならないってことでしょうか」

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江上 剛 [作家]

えがみ ごう/1954年1月7日兵庫県生まれ。本名小畠晴喜(こはた はるき)。77年3月早稲田大学政経学部卒業。同年4月旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。高田馬場、築地などの支店長を歴任後、2003年3月同行退行。1997年に起きた第一勧銀総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力する。『呪縛 金融腐蝕列島』(高杉良作・角川書店)の小説やそれを原作とする映画のモデルとなる。2002年『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。以後、作家に専念するも10年7月日本振興銀行の社長に就任し、本邦初のペイオフを適用される。


逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

作家・江上剛氏は、その人生で2回も当局による強制捜査を経験した。その逆境にあって、心を支えくれたのが、「聖書」「論語」「孫子」などの古典の言葉である。ビジネス界に身を置けば、さまざまな逆風にされされることも多い。どんな逆境にあっても、明るく前向きに生きる江上剛氏が、柔術ならぬ“剛術”で古典を読み解き、勇気と元気の“素”を贈る。

「逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―」

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