人の心に火をつけるのは、
「優秀者」の言葉ではない

 話を聞いているメンバーたちの顔もいつになく真剣で、いつもの会議とはちょっと違う雰囲気が漂っていました。

 その日の夜の懇親会で、話題の中心となったのはもちろんDくんの発表でした。何人もの人がDくんの発表に胸を打たれ、「アイツはあんなふうにがんばっていたのか」「そんな苦労があったのか」「アイツがそこまでやっているなら、オレももうちょっとがんばってみようか」など、前向きな言葉がたくさん聞けました。

 そのとき私は「メンバーの心に火をつけるのは優秀者の発表ではないんだ」ということを初めて知った思いがしました。

 優れた行動をみんなにシェアすることはもちろん大事です。しかし、業績を上げられない人が一歩でも、半歩でも前進しようと奮闘している事実をシェアすることも、実はとても大事だったのです。

 また、優秀者ばかりが発表していたら、他のメンバーは「どうせアイツは優秀だから」と、かえってモチベーションを下げることもあるでしょう。