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国内発売予定がない「ニンテンドー2DS」は
任天堂海外市場の救世主になる!?

石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]
【第40回】 2013年9月3日
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 これは、社会階層がある程度固定している国で顕著に表れる傾向だそうで、日本のように「1億総中流」、つまりみな同じモノを持つのが当たり前、という感覚がある国ではなかなか実感しにくいという。

 この話を元に考えると、2DSの価格は122.99米ドルで、標準版「3DS」(169米ドル)より40米ドル、画面拡張版「3DSLL」(199米ドル)よりも70米ドル安く設定されていることから、効果は高そうだ。特に、3DSをまだポケモンファンの子どもに買い与えていない親には強く影響するだろう。つまり、かつてDSが脳トレ専用機になったように、ポケモンしか遊ばないユーザーには2DSで十分だと考えても、マーケティングの観点から考えればおかしな話ではないのだ。

 ゲーム業界のユーザー層は幅広い。マイクロソフトの人気ソフト「Halo(ヘイロー)」を遊ぶための専用部屋を大金かけて自宅に作るユーザーから、「とにかくポケモンだけ遊べればいい」や「スマートフォンでただでパズドラを遊びたい」と考えるユーザーまでいる。

 また、世界でいちばん売れたゲームソフトは、8164万本を売った「Wii Sports」である事実からもわかるとおり、ハイエンドを好むユーザーがユーザーのすべてではなく、一部でしかない。そのことを、任天堂関係者が真剣に考えた結果が2DSの発売だったと言ってい換えても、あながち間違いではないだろう。

 また、コスト削減のターゲットとされた裸眼3D機能外しでもたらされる恩恵には、3Dに懸念を持つ親の心証回復も挙げられる。ある非公表調査で、子どものゲームユーザーを持つ母親にアンケート調査をおこなったところ、90%を超える母親が「裸眼3D機能は子どもの目に悪影響を及ぼすらしいから、3DSで遊ばせたくない」と回答したという。

 確かに、任天堂は裸眼3D機能について悪影響を否定できないことを公表しており、6歳以下の子どもには機能を切って遊ぶことを推奨しているのだが、アンケート結果は「とにかく裸眼3D機能自体がイヤ」という印象を与えるものだった。

 以上から裸眼3D機能を外した廉価版2DSは「子どもにポケモンを遊ばせるために、3Dがついていなくて安い3DS(=2DS)を買いたい」という行動動機を、特に母親を中心にもたらす可能性が高く、2DS発売は市場施策としては妥当であると考えられる。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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