Photo by Ryosuke Shimizu
絶滅危惧種の敏腕編集者――。
ベストカー元編集長の勝股優・講談社ビーシー会長からはまさしく、そんな印象を受ける。
業界紙・専門誌を訪ねるこの連載は5回目になるが、これまでで最もアクの強い人物だ(今のところ)。
「読者アンケート? あんなのは、自分に自信がないヤツがやること。俺は、自分が作ったものは絶対に面白いと思っているから」
後述するように、雑誌業界では常識になっている読者アンケートに対しても、この姿勢なのである。
自動車雑誌というジャンルは苦境にあるが、その中で、部数30万部を長年維持し、圧倒的なトップとして君臨するベストカー。
バブル崩壊以降、日本の自動車市場が縮む中でも、部数を維持してきた。しかも、他誌が月1回の発行なのに対して、ベストカーは月に2回、30万部を発行しているのだ。自動車雑誌全体の中でシェア15%ほどを握る。
さらに、ビデオリサーチが実施する閲読率のランキングの「男性40~49歳」において、1位となっている。つまり、40代にとって、一般週刊誌、マンガ雑誌、ファッション誌、趣味の雑誌など、全てを含む雑誌の中で最も読まれている雑誌がベストカーなのだ。
この絶好調ぶりを実現させたのが、勝股会長だ。
なにしろ、勝股会長は雑誌が創刊された36年前から在籍し、2013年3月に会長に就任するまで、33年間も編集長の任にあった。出版業界を見渡して、数十万部の部数の雑誌でこれだけ長い期間一人の編集長が担当し、しかも、部数を維持しているケースはない。ベストカー=勝股会長といっても過言ではないのだ。