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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

したたかな女性上司に引導を渡された元部下の告白
表向きは実力主義を謳う「某外資系人事」のからくり

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第11回】 2013年9月17日
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 今回は、「実力主義」で知られる某外資系IT企業(日本支社は社員数350人)が舞台となる。同社は20年ほど前に日本に進出し、当初からブランド力のあるソフトウェア製品をヒットさせた。

 ここで働く40歳の女性マネジャーの生き方を、元部下に取材を試みることで浮き彫りにし、この外資系企業の人事システムが抱える課題を考えたい。

 元部下によると、このマネジャーはプレーヤーとしての能力に問題があったという。にもかかわらず、会社の上層部に認められるのはなぜか。そこには、周囲の社員が理不尽な気持ちを禁じ得ない「悶える職場」の構造が見え隠れする。

取材に応じてくれたA氏(41歳)

 元部下の男性は、現在41歳。1年前、この女性から引導を渡され、リストラされた。現在は外資系の中堅企業に勤務し、部長職として活躍する。この記事では仮にA氏とする。

 A氏とのやりとりについては、よりニュアンスを正確に伝えるため、インタビュー形式とした。取材の内容は、実際に話し合われた内容の9割方を載せた。残りの1割は、会社などが特定でき得る可能性があることから省略した。


「力量は自分のほうが高いのに……」
なぜあんな上司にリストラされたのか?

A氏 あの女性マネジャーに怒りもないし、恨みもない。当時、彼女は38歳。管理職として5人(いずれも正社員)の部署をまとめていた。アメリカ本社のITヘッド(IT部門の責任者)からの期待にいつも応えていた。その意味では、立派だと思う。

 しかし、疑問もある。そもそもなぜ、会社はあのレベルの女性をマネジャーにして、1200万円以上もの年収を与えていたのだろうか。一方で、同世代の私は40歳でリストラになった。プレーヤーとしての、つまりITエンジニアとしての力量は、私のほうがはるかに高いはずなのに……。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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