身近な統計数字を使ってデータ分析のプロセスや読み誤りのコツを学ぶ吉本佳生さんの新刊『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』の一部をご紹介する本連載の第3回は、「若者の免許離れ」をテーマとした後編をお送りします。カーシェアリングなどが広がる一方、特に若者の“クルマ離れ”が叫ばれて久しいですが、本当にそうなのか?ミクロとマクロ両面のデータ分析を通じて、女性の免許取得率の低さが明らかになったので、その理由解明や対策を考えるべく、更に分析を続けましょう!

日本で女性の免許取得率が男性より低い理由

 若者に限らず、運転免許保有者の女性比率の推移を全年齢で調べると、1970年以降、順調に高まってきました。

 子育てのためには、お母さんもクルマが運転できるほうが便利だからという側面もあります。しかし、晩婚化や出生率低迷などの問題も指摘されていますから、運転免許保有者の女性比率について考えるなら、女性の生活よりも仕事のほうに注目すべきでしょう。

 日本の労働力人口の女性比率の推移をみると、月ごとで小刻みに変動し、1990年ごろ〜2000年ごろの10年間は伸び悩んでいましたが、長期トレンドとしては、女性労働の活用が進んできました。そして、働く女性が増えれば、運転免許を取る女性も増えやすいという関係は、論理が単純であるがゆえに、強力に働いていると考えられます。

 若者における運転免許保有者の女性比率が、人口の女性比率に近づく動きが足踏みをしている理由も、日本における女性労働の状況をみればわかります。そもそも、昔と比べて女性労働の活用が進んできたとはいえ、国際比較をおこなうと、日本の職場はまだ圧倒的に“男社会”であるとわかります。

図表1では「男性の労働力率を100としたときの女性の労働力率(人口に占める労働力人口の比率)」と「就業者に占める女性の比率」を、日本と欧米諸国で比べています。働く意欲があって、すぐに働ける状態にありながら職を得ていない失業者も、労働力人口にふくまれます。

 就業者に失業者を加えた労働力人口で女性比率をみたものが、上図です。他方、就業者だけで女性比率をみたものが下図です。

 なお、図表1と、あとに出てくる図表3のデータは、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年発行している『データブック国際労働比較2013』に基づくものです。同機構のホームページからもデータを得ることができます。