2013年6月、問題点の極めて多い生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案は廃案となったが、2013年8月1日、5月に成立した2013年度予算案に基づき、生活保護基準引き下げが実施された。
今回は、生活保護基準の引き下げに対して、2013年9月17日、22都道府県で行われた審査請求について述べる。東京だけで700人以上に及ぶ、生活保護を利用している当事者たちは、どのような思いのもとに、何のために、審査請求のために立ち上がったのだろうか?
妥当な理由なき基準引き下げに
約1万人の当事者が声を上げる
Photo by Yoshiko Miwa
2013年8月1日に開始された生活保護基準の見直し(実質的に引き下げ)は、2013年1月、社会保障審議会・生活保護基準部会がまとめた報告書の内容に基づく形で、直後から検討が始まった。
なお、生活保護基準部会は、「引き下げるのが妥当」と読み取ることができる内容を、報告書には一切盛り込んでいない。むしろ、「今回の検討には問題点が多い」「今回の結果をもって『引き下げやむなし』と結論づけられるべきではない」と読み取れる内容が、抑えた表現ながら、数多く見受けられる。
2013年1月下旬、厚労省が打ち出した生活保護基準の見直し方針では、この基準部会報告書の内容に加え、2008年から2012年にかけての大幅なデフレが考慮されている。そこでは「物価が大幅に下落しているのだから、生活保護基準は引き下げられることが妥当」とされている。この「物価が大幅に下落」に関しても、根拠と妥当性が疑問視されている。水道光熱費・生活必需品に関していえば、物価下落はほとんど見られておらず、むしろ上昇している。
この、妥当な理由らしい理由もなく強引に行われる生活保護基準引き下げは、直接打撃を受ける当事者のみならず、生活保護問題に関心を向ける数多くの人々を、さまざまな形で動かした。その結果の1つが、全国の22都道府県で同時に行われた一斉審査請求だ。筆者も、この活動の呼びかけ人に加わっている。
9月17日、青森県・埼玉県・東京都・長野県・大阪府(北より順)など22の都道府県で、数多くの生活保護当事者たちと支援者たちが各都道府県庁に赴き、審査請求の書面を提出した。件数合計は、17日までに、全国で7600件以上となった。生活保護は世帯を単位としているため、人数は件数よりも多くなる。最終的には、人数で1万人を上回る可能性が高い。
声を上げることを選んだ生活保護当事者たちは、全国の生活保護当事者の約0.5%にすぎない。しかし、この0.5%の人々は、嫌がらせや脅しを恐れて審査請求を断念した人々・施設や病院の中にいるため情報を得ることが困難な人々など、声を上げようにも上げられない人々も代表して、静かな勇気をもって動き始めた人々だ。
筆者は17日午前中、東京都庁で行われた一斉審査請求に、同行取材を行った。