人工甘味料が作用すると分かっているホルモンはほかにもあります。インクレチンといわれるホルモンのうち「グルカゴン様ペプチド-1(GLP−1)」は、食事をして血糖が上がったとき、血糖を抑えようとしてインスリンの分泌を促進するホルモンです。GLP−1は1986年に見つかったばかりで、まだ完全に解明されていません。ただ2009年のアメリカ国立衛生研究所の調査により、ダイエット・ソーダがGLP−1の分泌を促すことがわかりました。GLP−1はインスリンの分泌を促進しますから、長期にわたる大量の人工甘味料の摂取で、これもインスリンが多く分泌されるきっかけとなります。インスリンが過剰に分泌し続けると、その文平津能力が疲弊し、衰えれば高血糖になり、やがて糖尿病へと進行してしまいます。

 さらに、人工甘味料によって混乱しているのは、ホルモンだけではありません。

2.味覚を狂わせる

 人工甘味料のもつ甘みが、私たちの味覚にどのように影響するか、整理していきましょう。

 たとえば、同じ甘みのお菓子を食べても、Aさんは甘みに満足できず、Bさんには甘すぎるなんて経験ありませんか?Aさんは、普段から甘みの強いものを食べていて、味覚が鈍くなっているようです。一方のBさんは甘みに敏感なため、少しの甘みで十分満足できます。

 サッカリンは、砂糖の200〜700倍の甘みがあります。他の人工甘味料も砂糖に比べると、アスパルテームは160〜220倍、アセスルファムカリウムは200倍、スクラロースは600倍も甘くなっています。さらに、新しい人工甘味料であるネオテームは、砂糖よりも約7000〜1万3000倍の甘味の効力があります。

 もちろん、商品には薄めて使われるのですが、甘味の強い人工甘味料に慣れてくると、甘味に対する味覚が鈍っていきます。以前はコーヒーにパルスイートひとつだったのが今では2つ使っている、という方がいませんか?そうなると、自然の甘さの果物や天然甘味料を使用したお菓子を食べても、甘味を感じず、ついつい食べ過ぎたり、砂糖を追加したりするようになります。次第に、カロリーの摂り過ぎで肥満になります。

 そもそも、ヒトはどのように味を感知するのでしょうか。

 実は、私たちは、「味蕾(みらい)」と呼ばれる小さなひとつの器官で、「甘み」「酸味」「塩味」「苦み」「うま味」という5つの味を感じているのです。

 その「味蕾」はみなさんの舌にあります。鏡でご自分の舌を見てみてください。舌の表面には、小さな突起がたくさんあって凸凹していますよね。この舌乳頭と呼ばれる突起に、味蕾があるのです。味蕾は、味のセンサーとなるたくさんの味細胞が集まって、花のつぼみのような形をしています。味細胞は味を感知し、味覚神経をつたって大脳の味覚中枢に信号が伝わり、味を感じます。

 最近の研究で、甘みセンサーは、化学構造が異なる糖類(ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖)、甘みアミノ酸、甘みタンパク質、さらに人工甘味料も受容できることがわかりました。これらは、分子量や科学的な性質が大きく異なるものの、その甘みは同じセンサーでキャッチされている、というわけです。

 さらに、甘みセンサーは舌だけでなく、胃や腸、すい臓にもあることがわかってきました。

 特に、胃にある甘みセンサーが甘味を感知すると、グレリンが分泌されます。グレリンは胃などから分泌されるホルモンで、脳の視床下部に働いて食欲を増やし、成長ホルモンの分泌を促進させる働きがあります。お腹がすいて、胃が空っぽになるとグレリンの濃度は上昇し、何かを食べて胃に食べ物が入れば、グレリンは減ります。また、グレリンは脂肪を増やし、体重を増加させる作用があります。

 食後に甘いデザートを食べても、まだ食欲を感じるのは、このグレリンの作用と考えられています。人工甘味料の甘さも、同じ甘みレセプターで感知されますから、ここでグレリンが働いて、さらに食欲が増えるということになります。