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岸博幸のクリエイティブ国富論

骨抜きになった国家公務員制度改革の内幕

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第243回】 2013年10月18日
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 国家公務員制度改革法案が臨時国会に提出されようとしています。その内容については、新設される内閣人事局が政治主導で幹部公務員の人事異動を行なう、対象の幹部は600人といった報道が多いですが、こうした官僚側のレクに基づく本質を外した報道に騙されないでください。この法案では改革の内容がまったく不十分で、内閣人事局を創設してもまったく意味がないのです。

「幹部職員の身分保障」がある限り
降格は起き得ない

 安倍首相と菅官房長官は本当によく頑張っています。成長戦略についても、まだ物足りない点が多いとはいえ、財務省が嫌がる法人税減税に踏み込むなど、様々な政策で官邸主導を実現しており、その頑張りは基本的には高く評価すべきです。

 ただ、この2人ですべての政策をしっかりと監督・判断できるはずはなく、官邸主導から漏れてしまい、逆に官僚主導となってしまっている政策も散見されます。その典型が今回の公務員制度改革法案です。

 公務員は労働三権が制約される代償として身分保障されており、よほどのことがない限り、クビはもちろん降格にもなりません。今回の法案の最大の問題点は、内閣人事局が人事を担当する幹部職員について、一般職員と同様にこの身分保障が維持されていることにあります。

 そもそもこれまで各省庁の大臣が、幹部職員に若手や民間人の抜擢登用などを行なうといった政治主導の人事を行なえなかった原因は、この身分保障です。身分保障ゆえに現在幹部ポストにいる官僚を降格させられないので、形式上は大臣に人事権があっても、結局は年功序列型の順送り人事にせざるを得ず、大臣の人事権は実質的に奪われてきたのです。

 このように大臣の人事権を奪われてきたことが、政策を巡る最大の弊害である官僚主導、官僚独善体制の根源です。大臣が組織のトップといっても、人事権がなければ事務次官以下が好き勝手にやるのは当然だからです。

 この大臣と事務次官の二重トップ構造が、霞ヶ関の省庁で組織としてのガバナンスが機能していない原因であり、それをもたらしているのが幹部職員の身分保障なのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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