中国の不動産価格がまた上昇している。国家統計局が10月発表した今年9月の70都市の新規分譲住宅価格は、なんと浙江省温州市を除く69都市で上昇を示した。政策的にも「上昇を許すべきではない」とされた北京、上海などの大都市でも20%を超える上昇となった。
それまで中国は中央政府による調整策の導入で、1年ほど「不動産、冬の時代」が続いていた。その調整策とは他ならぬ「限購令」、「各都市に戸籍のある者しか買えない」「保有できるのは2戸まで」「外地戸籍者は1戸まで」などの条件で厳しくその需要を抑え込んだためである。上海では不動産取引も停滞した。専門家も悲観論が主流となり、不動産投資は期待薄となった。中には売りに転じる投資家もいた。
だが、そんな空気が一変した。今年9月、上海の新規分譲住宅の面積は141.8万m2と、過去4年の同期比でも最高値に達した。あの不動産ブームで盛り上がった2010年の水準を上回ってしまったのである。
だが、上海市民はこれに異論を突きつける。
「一般市民は限購令で買いたくても買えないはず。それ以上に価格が高すぎて買えない。それなのになぜ上海の不動産価格は下がらないのか?」
外国人が撤退、景気悪化する
“上海の青山”古北新区
上海市の古北新区といえば、上海を代表する外国人居住区だ。香港、台湾、韓国、日本などアジア系民族が集まり、国際的なコミュニティを形成している。ここは外資による中国投資の動向を別の角度から観察できる「第二の窓」のような存在であり、筆者もことあるごとにここを訪れる。
この古北新区のヘソといえば、仏資本のスーパー、カルフールである。一説には世界中のカルフールで一番の売上を誇る店舗なのだそうだ。同店は日本人に限らず、上海に赴任が決まった外国人駐在員が最初に足を運ぶ店舗でもある。かつては彼らが生活用品一式を取りそろえる姿が古北新区を象徴する光景だったが、最近は見かけることも少なくなった。昼間の売り場は人気がなく、座席の奪い合いすら見られたフードコートにも閑古鳥が鳴いている。