千鳥足ながらも、回復し始めている外食業界。業態によっては前年比プラスの月が定着してきた。ところが、居酒屋だけはまったく振るわない。居酒屋を追い詰める犯人は誰なのかを追った。

これから年末にかけてが、居酒屋業界の書き入れ時となる。低迷が続く中で、各社は低価格だけではない専門型へとシフトを始めた
Photo by Ryosuke Shimizu

 埼玉県のあるファミリーレストラン。平日の夕方に若い女性の2人連れがビールを飲みながら談笑している。つい最近、この光景を見た大手ファミリーレストランの幹部は感慨深げに漏らす。

「10年前にはファミレスでお酒を飲むのは恥ずかしいと感じる客もいたが、今や女性2人連れが飲んでいることは珍しくない」

 さらにこの幹部を驚かせたことがある。「この店では焼酎が50本もボトルキープされていた」のだ。

 今、外食に対する価値観と選択肢が多様化している。もはや、「酒を飲むなら居酒屋」は常識ではなくなった。ファミレスで酒を飲む「ファミ飲み」、あるいは、「日高屋」のような低価格の中華料理チェーン店で酒を飲む。こうした利用はこの10年、増加している。

 何しろ、ちょっとしたつまみと主食に酒数杯なら2000円未満と、低価格居酒屋に太刀打ちできる価格だ。加えて、今や焼酎などはファミレスでもボトルキープが可能になっている。

 この消費者の価値観の多様化は居酒屋業態を直撃した。

 日本フードサービス協会によると2013年1~8月の外食全体の前年同月比売上高が100%を下回ったのは3回。各業態では「ファストフード」で4回、「ファミリーレストラン」で1回、「ディナーレストラン」で1回となっている。

 ところが、「パブレストラン/居酒屋」だけは前年同月を上回った月はゼロ。振り返れば、12年の年間平均でも、100%を下回ったのは居酒屋業態だけだった。