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財部誠一の現代日本私観

ホテル、百貨店で偽装を続発させた
「レストラン」という世界の特殊性

財部誠一 [経済ジャーナリスト]
【第21回】 2013年11月8日
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 阪急阪神ホテルズに始まったメニューの偽装・誤表記が、その後、日本全国の有名ホテルに続々と広がっていった。正直驚いた。企業社会では過剰とも思えるほどの人的、事務的コストをコンプライアンスにかけているご時世に、有名ホテルのメニューの偽装・誤表記問題が続発すること自体が異常である。

 なぜこんな事態が続発しているのか。

レストランだけ治外法権
モラルを越えた「徒弟制度」的な実態

 大手食品メーカーの経営者は「料理の現場」の特殊性に注目する。

 「レストランは職人の世界。親方弟子の徒弟制度のような慣習のなかで技能や専門性が引き継がれている。内なる常識と世の中の常識との間に大きなズレが生じた典型例ではないか」

 単純なモラルを越えた問題が潜んでいるという。

 「たとえば『秘伝のたれ』のような表示は料理屋さんでは通じても、我々食品メーカーではまったく通用しない。なぜなら原材料はすべて開示だから」

 原材料の情報開示どころどころか、原材料を秘匿し続けるミステリアスなことこそ老舗の味だという感覚が確かに日本人にはある。その閉鎖性にさらに輪をかけているのが「徒弟制度」的な実態だ。

 親方は絶対者であり、仕入れから調理まで、もちろんメニュー(お品書き)の細部にいたるまで、親方がすべてを仕切る。ホテル全体のオペレーションは近代的、合理的に行われていても、レストランは治外法権という現実が残っている。ホテルの看板は立派でも、レストランの内実は親方個人のモラルがすべてを支配するという閉鎖社会だ。

 ただし、そうはいってもひとたびメニューの偽装や誤表記が表沙汰になれば、ホテルのブランドイメージは地に落ちる。一度棄損したブランド価値を再生するのは簡単ではない。ましてや阪神ホテルシステムズが経営をしているリッツ・カールトン・大阪では冷凍ジュースが「フレッシュジュース」と称して客に提供されていたとなると、いくら誤表記を強弁したところで、信頼はすでに失墜している。

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財部誠一 [経済ジャーナリスト]

1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。BS日テレ『財部ビジネス研究所』、テレビ朝日『報道ステーション』等、TVやラジオでも活躍中。また、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し、「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。


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経済ジャーナリスト・財部誠一が混迷を極める日本経済の現状を鋭く斬るコラム。数々の取材から見えた世界情勢を鋭く分析するとともに、現代日本にふさわしい企業、そして国のあり方を提言していく。

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