7月から9月までのGDP(国内総生産)の速報値が11月14日に発表された。追って改定値が発表されるため、今回の数字を見て経済の動きを速断することはできないが、それでも大筋の流れは読み取ることができる。

 気が付いたことをいくつか列挙してみよう。

GDP速報値から垣間見えた
5つの不安要素

(1)経済成長率が鈍化し、アベノミクスが息切れしているのではないかと不安を抱かせる。

 7~9月の実質成長率は、年率換算で1.9%。これは前期(4~6月)の3.8%と比べて半減している。確かに4四半期連続でプラスとなっているが、不安が残る数字となっている。

(2)特に、GDPのほぼ6割を占める個人消費が猛暑日が多かったにもかかわらず0.1%増に過ぎなかったことが落胆させる。1~3月の0.8%、4~6月の0.6%と比べて落ち込みが大きい。甘利明経済再生担当相は「株価の一服感が主要な原因」と言うが、それで説明することはかなり難しい。やはり、株高による高級品の売れ行きが個人消費を牽引することに限界が見えたと言えるのではないか。それに夏場は高額商品の売上高の伸びも鈍化している。株高効果に過剰な期待感は禁物で、これから“賃上げ”の必要性を訴える声が一段と高まってくるだろう。

(3)景気回復の機関車と言える民間設備投資も3四半期連続でプラスとなったのは喜ばしいころだが、前期比0.2%、年率換算1.1%はいかにもさびしい数字。プラス幅が前期より縮小していることも気になる。これでは思い切った投資減税を実施しても空振りになる可能性もある。

(4)輸出は4~6月と比べて0.6%の減。マイナスとなったのは3四半期ぶりである。いかに円安でも相手のあること。米国やアジアへの輸出が伸び悩んでいる影響が大きい。

(5)それにしても、頼みの7~9月の数字が予想外に低かったのはいかにも悩ましい。なぜなら、この数字は総力の政策援護を受けた結果であるからだ。