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2030年のビジネスモデル

人口減少時代に、人口を10%も増やし、いきいきと若返ったまち

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第14回】 2013年12月12日
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ターゲットはDEWKs

 人口減少の時代に、人口を10%、1万6千人も増やしたまちがある。しかも子育て世代の30代夫婦を中心とした人口流入であるため、人口構成も若返った。これは、「子育て世代の共働き夫婦」(Double Employed With Kids: DEWKs)を狙い撃ちした千葉県流山市(総人口は16.9万人)のマーケティング戦略の成果である。DEWKsは共働きだから世帯所得が高く、税収や、街の商業・サービス業活性化への寄与度が大きい。またDINKs(Double Income No Kids)とは違って子供を持つため、次世代もこの街に持続的に住み続ける可能性がある。

流山市住民誘致のキャッチ・コピー

 流山市の人口は、2005年の15万3千人から2013年には16万9千人へと増大。人口ピラミッドの推移をみると、10歳未満の子供と、30代~40代の子育て世代が大幅に増加している。今や30代~40代の子育て世代の人口が、かつてのボリュームゾーンであった団塊世代の数を上回り、流山市の人口構成における最大のボリュームゾーンとなった。流山市は単に人口増を達成しただけでなく、人口構成を未来に向けて持続可能性を高める方向へと再構築したのである。

 普通の自治体は、人口変化に対して受動的に反応する。つまり、「これからコミュニティは高齢化していくから、高齢者を重視した都市計画なり行政施策が大事」という考え方になる。この論理は、議会の意思や選挙の思惑とも直結している。

 これに対し流山市の井崎義治市長(2003年市長就任)は、自治体財政や街の活性化、世代の持続性というものを考えた時、小さな子供を持つ共働きの夫婦が、未来の流山市にとって重要な役割を果たす人口資源であると考え、望ましい人口変化を自らの手で誘導しようとアクティブに働きかけた。それは、ターゲティングやマーケティングの必要性を理解しない行政内部や議会の抵抗勢力と真っ向から向き合う闘いでもあった。

 「人口減少と都市間競争の時代」と、誰もが口では言う。しかし、それを自分たちの街の危機感として腹に落としている政治家や行政マンはどれだけいるだろうか。さらには思うだけでなく、対策戦略を実行に移せるリーダーは稀有といえる。現実の危機を見据えた戦略的な論理、長期的な時間軸を持ったビジョン、そして抵抗勢力を恐れぬ勇気と粘り腰。井崎さんとお会いし、この人は普通の政治家とは違うと感じた。

子育て世代の共働き夫婦、その最大の悩みを解決する

では、実際にどうやってDEWKsを流山市に惹きつけたのか?流山市は、つくばエクスプレス(TX)で秋葉原から20~25分、「都心から一番近い森のまち」として緑に囲まれた生活環境の良さをアピールし、さらに保育所の定員を大胆に増やし、市の二つの主要駅から各保育所へバスで送迎するハブシステムを作りだすことによって、子育て共働き夫婦の最大の心配事である保育所問題の解決を図ったのである。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


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未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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