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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

理屈っぽいホルスタインの群れで路頭に迷う教材マン
辞めたいのに辞められない無風職場の「負の引力」

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第24回】 2013年12月17日
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 今回は、創業50年近い教材制作会社(正社員150人ほど)の制作課で働く40歳目前の男性(非管理職)を紹介しよう。仮にこの男性をA氏とする。

 私はA氏とは取材などを通じ、2007年から現在に至るまで数十回、話し合ってきた。互いによく知る仲である。今回のやり取りの中で筆者が指摘する意見には、A氏にとって少々厳しいものもあるかもしれないが、決して口論の類を仕掛けているわけではない。

 A氏は、入学難易度が相当に高い大学を卒業し、新卒でこの会社に入り、懸命に仕事をしている。しかし、いつしか空しさを感じるようになったという。その理由は、本人も正確にはわかっていない。会社の待遇自体は悪くないからだ。

 最近は、直属の上司である課長や、その上の部長からの指示などに強い不満を持つ。本人いわく、「不満が止まらない」とのこと。そんな「悶える心理」の奥に何が横たわっているのか、解き明かしたいと思う。


上司が誰なのか、わからない
「ワンマン・ツーボス」に悶える社員

A氏 上司が誰なのか、わからない。本来は、40代前半の制作課長(女性)。だけど、その上にいる部長(40代後半、男性)から仕事の指示を受けることが多い。週に3~5回は、部長から「こういう仕事をするように」と言われる。

筆者 「ワンマン・ツーボス」の状態ですね。

A氏 その仕事をしていると、今度は課長から「私が指示した仕事は、その後、どうなっているの?」と聞かれる。「部長から指示された仕事をしている」と答えると、課長の顔色が変わる。それで、僕にネチネチと嫌味を言う。部長は制止するどころか、見て見ぬふり。同じ部署の他の部員10人ほども、何も言わない。

筆者 2人の上司は、真摯に向かい合うことがあまりないのですね。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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