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野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき

円安による原材料費増は
誰が負担しているか?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第5回】 2013年12月19日
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 円安は輸入価格を上昇させるので、これがどう負担されるかは大きな問題である。

 転嫁がどの程度なされたか、負担はどの程度増えたか等に関する定量的な把握が必要だ。以下では、これについての分析を行なうこととする。

円安の収支計算

 2012年10月から13年9月までの輸入額は77.0兆円、輸出額は67.1兆円だ。

 為替レートは、12年10月の1ドル=79.8円から13年9月の98.2円まで円安になった(18.7%の減価)。仮に79.8円のままなら、輸入額は77.0×(79.8/98.2)=62.6兆円になっていただろう。だから、円安による増加分は14.4兆円と評価される。(1)

 他方、輸出は54.5兆円になっていたはずだから、円安による増加分は12.6兆円だ。(2)

 ここで、輸入額のほうが約10兆円多いので、増加額には約2兆円の差があることに注意が必要だ。

 では、輸入の増加分は、誰が負担するか?最終財に転嫁された分を計算しよう。

 12年10-12月期から13年7-9月期までの1年間の各需要項目の合計額は、下記のとおりだ。

 ・民間最終消費支出は、290.9兆円

 ・投資支出は、民間住宅が14.8兆円、民間企業設備が64.3兆円、公的固定資本形成(公共投資)が22.4兆円。合計で101.5兆円だ。

 民間最終消費支出については、消費者物価指数で評価する。全国の総合指数は、12年10月の99.6から13年9月の100.6まで、1.0%上昇した。これによる民間最終消費支出の増加額は、290.9×1%=2.91兆円だ。(3)

 投資支出については、企業物価指数のうちの資本財の価格指数で評価する。この指数は、12年10月の97.0から13年9月の98.5まで、1.5%上昇した。

 これによる投資支出の増加額は、101.5兆円×1.5%=1.52兆円だ。(4)

 したがって、輸入額の増加のうち転嫁された分は、(3)(4)の合計である4.43兆円である。(5)

(なお、原理的には輸出への転嫁もありうるが、ここではないものとする。)

 残り、14.4-4.4=10兆円が企業負担になっているはずだ。(6)

 結局、企業の1年間の利益増は、(2)(6)から、2.6兆円だ。(7)

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき

アベノミクスの本質は、株価や為替レートなど資産価格のバブルを利用して、経済が好転しているような錯覚を人々に与えるものだ。人々の将来への「期待」を高め、それを実体経済の改善につなげようとする。たしかに、株価は上がり、輸出企業の利益は増えているが、賃金や設備投資に回復の兆しは見られない。果たして、人々の「期待」は実現するのか、それとも「幻滅」に変わるのだろうか?

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