ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき

マネーストックの高い伸び率は見かけだけ
住宅駆け込み需要が減ればさらに低下

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第9回】 2014年1月23日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 日本銀行が2013年4月に導入した異次元金融緩和措置は、所期の効果を発揮して経済状況を改善しているのだろうか?

 日本銀行は、異次元金融緩和において、市中銀行が保有している国債を購入することにより、マネタリーベースを年間60兆円程度増加させるとした。教科書的な説明によれば、マネタリーベースが拡大すると、それに数倍する規模でマネーストックが増大する。マネーストックの大部分は銀行預金であり、銀行預金の増加は、銀行貸出の増加によって引き起こされる(信用創造メカニズム)。

 問題は、このとおりのことが生じているか否かだ。

 これについては、この連載の第2回でも述べたのだが、マネーストックの12月の数字が公表されたので、最近時点までの状況を確認しておくのは意味あることだろう。

マネタリーベースは著しく増えた

 マネタリーベースとマネーストックの対前年増加率および対前月増加額は、図表1図表2に示すとおりである。

 まず、日本銀行が直接に動かせる変数であるマネタリーベースを見ると、著しく増加した。

 マネタリーベースの平残(平均残高)は、3月の134.7兆円から12月の193.5兆円まで58.7兆円増加した。増加率は43.6%だ。12月末残高は201兆8472億円で、異次元緩和措置で目標とされていた200兆円を上回った。

 マネタリーベース平残の対前年同月比は、13年8月以降継続して40%を超えており、11月には52.5%という異常な高さとなった。図表1に見るように04年以降のマネタリーベース平残の対前年同月比は10%未満であり、包括的金融緩和政策が導入された10年においても20%程度になったに過ぎない。これと比較すると、異次元金融緩和措置後のマネタリーベースの増加がいかに著しいかがわかる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき

アベノミクスの本質は、株価や為替レートなど資産価格のバブルを利用して、経済が好転しているような錯覚を人々に与えるものだ。人々の将来への「期待」を高め、それを実体経済の改善につなげようとする。たしかに、株価は上がり、輸出企業の利益は増えているが、賃金や設備投資に回復の兆しは見られない。果たして、人々の「期待」は実現するのか、それとも「幻滅」に変わるのだろうか?

「野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき」

⇒バックナンバー一覧