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野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき

2014年度はゼロまたはマイナス成長
――消費税増税より大きい公共投資減の影響

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第8回】 2014年1月16日
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資産価格と実体経済の区別

 日本経済を考えるにあたって、つぎの2つを区別する必要がある。

 第1は、為替、金利、株価などの資産価格だ。これらは、期待によって大きく変動することが多い。日本の場合、株価はほとんど為替レートで決まる。投機資金の動きも顕著で、マネーゲームの様相を強くしている。

 第2は実体経済だ。消費や投資の動き、輸出入や貿易収支、生産、賃金や雇用などである。国民生活に影響するのは、経済のこの側面だ。そして、為替レートが物価や企業利益に影響することを除くと、これらは資産価格の動きとはあまり関係なく決まる。また、期待だけが変化しても、それによって大きく影響されることはない。

 資産価格と実体経済の遊離は、2013年に顕著に進んだ。円安で株高が進んだことから、人々の関心は資産価格の動向に集中した。そして、日本経済の実体が改善しつつあるという錯覚に多くの人が陥った。しかし、実体経済は不調を続けたのである。ただし、後述のように、公共投資が著しく増加し、また住宅の駆け込み需要があったため、それが覆い隠された。

 2014年においても、資産価格と実体経済が乖離した動きを示すという点では変わらない。しかし、実体経済の停滞は、もはや無視しえないほどに拡大するだろう。すなわち、実質経済成長率はゼロあるいはマイナスになる可能性が高い。

 ただし、それは、一般に考えられているように消費税増税によるのではない。その効果は無視しえないとはいえ、より大きな影響を与えるのは、公共投資や住宅駆け込み需要の効果が剥落することだ。また、円安による物価高で実質消費の伸びが低下することだ。さらには、実質輸入が増加する半面で実質輸出が停滞すると考えられることだ。

 上で区別した2つのうち、第1の資産価格の動向を左右するのは、為替レートの動きである。これに影響を与えるのは、前回論じたとおり、ユーロ情勢とアメリカ金融緩和の縮小である。ただし、これらは政治的要因も影響するので、見通しにくい。

 他方で、実体経済は、これらとはあまり関係なく決まる。そして、資産価格よりは見通しやすい。以下では、これについて検討する。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 期待バブルが幻滅に変わるとき

アベノミクスの本質は、株価や為替レートなど資産価格のバブルを利用して、経済が好転しているような錯覚を人々に与えるものだ。人々の将来への「期待」を高め、それを実体経済の改善につなげようとする。たしかに、株価は上がり、輸出企業の利益は増えているが、賃金や設備投資に回復の兆しは見られない。果たして、人々の「期待」は実現するのか、それとも「幻滅」に変わるのだろうか?

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