比較で浮き彫りになる
トヨタの効率のよさ

有価 そうです。製造原価のうち期間経費を見ると、トヨタが少し(76億円)多いのです。
内訳を見ると、トヨタは労務費が少なくて逆に償却や経費が多いので、人の効率を上げるために、それだけ設備やシステムに投資しているという気がします。

先生 ほう、よいところに気がついたね。製造コストについてはそういうことが言えそうだ。

有価 逆に販管費を見ると、日産が697億円も高いのです。内訳を見ると、すべての項目で日産が高い、つまり販売管理全体の効率が劣るということですよね。それだけ人手もかけ、手間もかけ、やっきになって売ろうとしているけど、トヨタの方が効率がよかったということになります。

先生 そのとおりだね。ところで広告費は、規模の差がそのまま効率の差を生む特別な仕組みがあるのだよ。経太くん、台数にかかわらず総額ではトヨタと日産の広告費はどうなっているかね。

経太 トヨタが843億円、日産が420億円、トヨタがちょうど日産の2.2倍です。134万台規模に直すと、トヨタは292億円と少なく、1台あたりの効率がよいと見えますが。

先生 けれど、たとえばテレビのコマーシャルを考えてごらん。広告1回分のコストは、たくさん売れようが売れまいが同じだけかかる。つまり、トヨタは全国に2倍の広告量でアピールしていることになる。広告はシェアが高ければ高いほど、結果として売上げあたりの効率がよくなるわけだ。

経太 こういうところで、規模の差が効率にはねかえるという要素があるんですね。なるほど。

先生 さて、そこまで考えたところで、両社の損益分岐点はどうなった?

経太 まず、損益分岐点ですが、日産が136.8万台であるのに対して「日産並みトヨタ」は105.7万台という計算になります。

有価 トヨタの方が損益分岐点が30万台少ないのね。でも、損益分岐点で言うと、ゴーンさんが達成した93万台はもっとすごいということになりますね。

先生 それはそのとおりだね。でも収益性は世の中の景気など外部状況を反映するから、アップル・ツー・アップルで考えるなら、同じ平成13年度のトヨタと比較する方がフェアだね。
ちなみに13年度のトヨタの営業利益は7,489億円に伸びているよ。